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입력 2018년 7월 28일 14시 22분
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インタビューをご快諾いただき、誠にありがとうございます。
以下の質問について、お答えいただきたく存じます。
= 『週末カミング』を書かれたきっかけについて教えてください。
最初のいくつかは特に週末ということを意識せずに、仕事をしている普段の日々とは少しだけ違う行動をしてみた日、そのことによって少しだけ気持ちに変化が訪れる瞬間のようなものを書きたいと思いました。何編か書くうちに「週末」というつながりを見つけました。
= 単行本のタイトルは、収録されている短編のタイトルから取ったものではありません。単行本に別のタイトルを付けた理由はありますか。
「週末」という、共通のテーマを一言で伝えたほうが読者の方にも興味をもってもらえるかなと考えました。それから「今度の週末に読もう」と思ってもらえたら、と。
= 作品を読んでみると、人物の状況はそれぞれ異なっても、読む側にとって馴染みのある日常会話が行き交います。誰でも一度は、「私にもこのようなことがあった」と思えるような状況が描かれています。その状況や会話が非常に自然に感じられますが、それは作品のために念入りに練られたものですか。
いくつかのエピソードや会話はわたしが実際に体験したできごとを元にしていることもありますが、そこから想像を広げて、自分にもありそう、こんなことが起こるかも、と感じてもらえるように、練り上げていきました。
= 韓国の読者レビューの中に印象的なものがいくつかありました。「最初は本のタイトルに惹かれた。注文した本を受け取った時は、表紙の雰囲気に惹かれた。金曜日の退社前の自分が描かれているようで。そして八つの作品を読み終わった後、ただただ、作品のすべてに惹かれた。」また、ある読者は「土曜日の午後の、まるで午睡のような作品」、「午後の暖かい日差しのような作品」とレビューを書いています。このような感想を聞いて、意図通りに読まれていると感じますか。
基本的には、読む人が自由に思いを馳せてくださることがいちばんうれしいです。読者の方の感想を伺って、自分でも発見があることがありますし、自分の言葉が届いたと思えることは作家にとってとても幸せなことです。
= 年末年始に里帰りもできず、風邪で寝込んでいる女性の週末を描いた「ハッピーで、ニュー」では帰省で人がいなくなった都会が、「ここからは遠い場所」では山も海も川も好きではない、アウトドア店で働く女性店員の週末の風景が描かれています。都市で、女性が、一人で生きていくということについて、何か特別な思いがありますか。もしそうであれば、教えてください。
韓国でも日本と似た状況があると思いますが、一人で生活をして生きている女性は多くいます。わたし自身もそうです。しかし、彼女たちの声や暮らしている中での感情や悩みは、まだまだ世の中で埋もれがちです。仕事をして、ちょっとした楽しみもあって、日々の暮らしをちゃんと営んでいるにもかかわらず、どこかで、自分はなにかが足りないのではと不安やプレッシャーを感じながら生きている女性が多いのではないでしょうか。そんな生活の中にある、小さくても大切な楽しみやよろこび、けっしてすべてがうまくいっているわけではないけれどなんとか自分の人生を歩んでいこうとしている強さを、書きたいと思っています。
= 姫路城に行く予定だったのが、途中、車が故障して、修理工場で週末を過ごす「つばめの日」。金曜日のクラブで会った妹の恋人の友達のアルバイト先であり、閉店間近の書店で過ごす夏の風景を描いた「蛙王子とハリウッド」。週末の時間は計画通りになりません。時間は計画通りにならないと考えていますか。
ものごとはいつも計画通りに行くとは限らない、むしろうまく行かないことのほうが多いかもしれません。特に、学生から社会人になり、仕事や人間関係が複雑になっていくほど、思わぬハプニングが起こります。しかし、計画通りではないからこそ出会う人、偶然によって体験することによって、普段自分一人では思いつかなかったこと、できなかったことに、気づかされることも、多くあります。それで人生が大きく変わるわけではないけど、ちょっとだけ明日の見方が変わる。その積み重ねで、人生はできているのかもしれません。
= 「蛙王子とハリウッド」で主人公は「わたしにはもう何年も前から夏休みなんてない。就職して最初にがっくりしたことは、春休みがないことと夏休みが五月の連休よりも短いことだった」と述べています。韓国では週五日働くことが一般的となりましたが、しかし、週末をどのように過ごせば良いか悩む人が意外と多いようです。週末は我々にとってどのような時間であるべきだと思いますか。
週末を、友人たちと賑やかに過ごすことが好きな人もいれば、一人で家で本を読むのが好きな人もいます。重要なのは、「一人でいるとさびしい人と思われるかも」「最近流行っているあの場所へ行かなければ」と自分の気持ち以外のことを基準にするのはよくないということだと思います。自分がそのときにいちばんしたいことをする(人から見たらくだらないことであっても)、自分のための時間であればいいと思います。
= 「つばめの日」を読むと、つばめの動きが細かく描写されています。他の作品でも風景が繊細に描かれていて、読んでいる内にその世界に引き込まれます。普段も日常の風景を注意深く観察している方ですか。もしそうであれば、それは単なる習慣ですか。あるいは作家としての心がけですか。
すべてについてではないですが、自分が気になることはついじっと見てあれこれ考えてしまうほうです。どこにいてもなにかしら気になることを見つけるので、退屈することはありません。それは子供のころからそうなので、小説のためにしているのではありませんが、作家になりたいと思ったのも子供のころからなので、「これを小説に書くとしたら……」考えるのも習慣になっています。
= 「なみゅぎまの日」にはこのようなことが書いてあります。「世の中は週末なんだな。みんな、楽しく遊んだり、ゆっくり遊んだりする日なんだな。/わたしは、土日に家族揃って出かけたことがないから、世間の人はそういう習慣なんだろう、という感覚でしかない。」「世の何割ぐらいの人が土日休みなのかな。」
休みではない週末、働かなければならない週末についてどう思いますか。
母が美容師をしていて週末に働く姿を見て育ちましたし(出身地の大阪では美容院は月曜日が休みです)、今はわたし自身が平日と週末の区別がない仕事をしています。平日に空いている繁華街や展覧会に行けるのでわたしはこの生活がけっこう気に入っていますが、週末に働いている人たちは大勢いるのにその存在は忘れられがちだとも思います。週末に楽しむ人たちを支える大切な仕事、一年中暮らしを支えている仕事はたくさんあります。「週末」をテーマにすると決めたとき、週末に働く人の話も必ず書こうと思いました。
= 『週末カミング』は、日常の繊細な描写が引き立ちます。「あとがき」に「現実のわたしたちと同じ街にいる誰かの話と思って書いている」と書いています。小説を書く時、実際の経験を交えたりしますか。
実際の経験がヒントになっていることもありますし、友人から聞いた話が元になっていることもあります。たいていはそれをそのまま小説にするのではなくて、その出来事の中の、自分が気になる「核」のようなものを取り出して小説にしていきます。
= ときには、週末だから何かしなければならないわけではないと思う時があります。ただ、家族のいる人は、金曜日になると、土曜日に何をすれば良いか、悩んでしまうことも多いはず。柴崎先生の週末はどうか、教えてください。週末には何をして過ごしていますか、あるいは理想とする週末の風景がありますか。
今はカレンダー上の週末は「月曜までに仕事をする日」になってしまうことも多いですが、仕事をしなくていい日は、なにもしないでゆっくりするか、友人と会って食べてしゃべりたいです。友人たちとおいしいものを食べてたくさんしゃべることが、わたしにとっていちばんの楽しみです。
= 「あとがき」に、「小説を書き始めるとき、それがどの季節の何曜日のことなのか、」考えると書いてあります。曜日があまり関係ない仕事をしていて、「曜日の感覚を保ってくれていたテレビ番組も、ほとんど録画して見るようになったのも」曜日の感覚が薄れている一因に違いないと書いていますが、その後、新しく発見した「曜日の感覚を保つ方法」はありますか。
発見できていません。でも、曜日の感覚を忘れていると、電車に乗ったときに空いていて休日だと気づいたり、連休があると急に知ったりして、新鮮で得した気分になれるので、忘れているのもいいかなと思っています。
= 構想中の次の作品があれば、内容を簡単に紹介してください。
ある程度年齢を重ねた人が、自分自身の子供時代や学生時代を振り返るような話を考えています。子供のころに違和感を抱きつつわからなかったことが大人になると理解できるようになるという体験に興味を持っているからです。
= 韓国でも、『きょうのできごと』を読み、映画を見た人も多いです。彼らに何か伝えたい言葉があれば、お願いします。
『きょうのできごと』はわたしのデビュー作で20年近く経ちますが、映画も含めて今でも大切に思ってくださる方が多くいて、とてもうれしいです。韓国にもたくさんいらっしゃるとうかがって、ほんとうに幸せな気持ちです。実は数年前に『きょうのできごと、十年後』という、同じ登場人物たちの十年後を書いた小説を出版しました。また十年後も書きたいと思っているので、映画を見た方、小説を読んだ方も、登場人物の彼らが今頃どうしてるかな、と想像してもらえたらうれしいです。
インタビューに応じてくださり、誠にありがとうございました。
心よりお礼申し上げます。
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