「15年前の個人的な出来事が、現在進行中の特検捜査に影響を与えてはならないと考える」。尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の妻の金建希(キム・ゴンヒ)氏の国政壟断疑惑を捜査している閔中基(ミン・ジュンギ)特別検察官は、ネオセミテック株約1万株を2010年の上場廃止直前に処分し、1億ウォンを超える差益を得た件について、20日に初めて立場を明らかにした。株式の取得と売却に違法性はなかったと強調し、特検としての職務を果たすと述べ、辞任要求を拒否した。特検の捜査対象である金氏の「大儲け投資」リストにあった株を閔氏がほぼ同時期に売却したことが明らかになったが、「時効が成立した時点の個人的な行為」として終わらせようとした印象を拭えない。
しかし株の取得と売却の経緯について具体的説明がなければ、疑惑は連鎖的に拡大せざるを得ない。ネオセミテックは、コスダック市場制度をも変えた不良裏口上場の典型株と呼ばれていた。2009年10月に裏口上場でコスダックに上場したが、わずか5カ月後の翌年3月に取引停止となった。額面500ウォンの株は上場後、1万7800ウォンまで上昇したが、会計不正で瞬く間に紙くずとなった。少額株主7千人余りと機関投資家は4千億ウォン規模の損失を被ったが、閔氏は3千万~4千万ウォンを投資し、約1億5800万ウォンで売却したという。4~5倍の利益率だ。誰の紹介で、いくらで買い、どのように売却したかなど納得できる説明がなければ、未公開情報を受け取った疑いは払拭されない。
金氏が特検で起訴されたのは株式投資のためだ。「株式専門家ではなく、一般投資家として証券会社の指示通りに投資した」という金氏の弁明を特検が覆した。金氏が証券会社担当者と通話した録音ファイルが決定的証拠の一つとなった。09年にドイツモータース株を店頭で購入した際、金氏はネオセミテック株を約8億ウォンで取得し、上場直後に15億ウォンで売却したという。その際「空売り」「裏口上場」といった言葉を口にしており、一般投資家とは見なし難いというのが特検の見解だ。特検が被疑者と同じ銘柄を取引した場合、捜査チームは被疑者の発言を疑い続ける一方で、「証券会社職員の勧めで売却した」という閔氏の説明を鵜呑みにすべきだろうか。
金建希特検は、過去の政権を捜査対象にしている点で政治的捜査の性格を持つ。いかに捜査を適切に行っても、捜査対象者から承服を得るのは難しい構造だ。ところが特検に瑕疵があれば、不服の口実となり、捜査結果への議論が大きくなるのは必至だ。「利益率だけ見れば、金氏は2倍に満たず、閔氏は4倍を超える」という主張に、特検はどう反論するのか。これだけでも、特検の株取引は個人的なことではなく、200人を超える特検全体の信頼性にも直結する問題となっている。
閔氏は当該株の保有事実を、08年当時、高裁部長として公開していた。10年には国政監査で株の上場廃止が大きな論争となった。金氏が閔氏と同じ株を持っていた事実を閔氏がいつから知っていたかは不明だが、そもそも特検を担当すべきではなかった。株で利益を得たか損失を出したかに関わらず、回避すべきだったのだ。一度「不適切な外観」を疑われれば、時間が経っても不信は消えないことを、裁判官出身の閔氏は誰よりもよく知っている。追加説明をするか、さもなければ閔氏自ら身の処し方を決めるべきだ。
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