韓悳洙(ハン・ドクス)大統領権限代行の大統領選出馬に続き、崔相穆(チェ・サンモク)経済副首相が国会の奇襲的な弾劾訴追を避けて辞任したため、李周浩(イ・ジュホ)社会副首相兼教育部長官が2日から大統領権限代行を務めることになった。閣僚序列4位が大統領権限代行を務める「代代代行」体制は初めてのことだ。李周浩氏は大統領選までの1ヵ月間、軍統帥権者に加え、国政全般を統括し、選挙管理まで行う重責を担うことになる。
李周浩権限代行体制は突然決定された。最大野党「共に民主党」の大統領選候補の李在明(イ・ジェミョン)氏の公職選挙法違反事件について、大法院(最高裁)が二審の無罪判決を破棄し、審理をソウル高裁に差し戻す決定を下すと、これに反発した同党が同日夜、崔氏に対する弾劾案の処理に出たのだ。突然、権限代行を補佐する組織となった教育部は、マニュアルを探しながら右往左往する様子を見せた。国政全般を統括する首相や予算を執行し政策全般を扱う経済副首相とは異なり、社会分野だけを見てきた李周浩氏は、省庁間の調整に限界があることは否めない。さらに今は、国際安全保障および通商秩序が急変する準戦時状況だ。万全な政府でも対応が難しい任務を、関連経験が皆無な「代代代行」が、それも19省庁のうち5つの長官ポストが空席の政府を率いて遂行しなければならないのだから、誰もが国政が麻痺するのではないかと気が気でないだろう。
早くも、米国との関税交渉を主導してきた韓氏と崔氏が一度に抜けたことで、米国に主導権を奪われるのではないかという懸念が出ている。経済副首相代行と産業通商資源部長官を中心に、米国のスピード戦略に巻き込まれず、通商交渉の基本枠組みを定めることに集中しなければならない。金融市場を安定させ、苦労して成立させた追加更正予算を早期に執行し、実体経済の回復力を高めることも喫緊の課題だ。北朝鮮の挑発のような危機的状況で、軍統帥権者が頻繁に交代し、国防部長官と陸軍参謀総長までもが職務代行または代理体制で運営されているため、安全保障の空白を懸念する声が大きいのは当然だ。万全の態勢を維持するとともに、米国が中国牽制のために構想している在韓米軍の再配置が新たな安保不安要因にならないよう備えなければならない。
「非常戒厳」以降、4ヵ月以上にわたり、政府トップが大統領-首相-経済副首相-首相-社会副首相と代わった。未曾有の国政混乱が外部からの攻撃でも天災でもなく、自ら招いた事態であるという事実に、無能で無責任な政府と政界は重い責任を感じなければならない。新政府が発足するまで、政治指導者たちは少なくとも国の困難を増長させることだけは慎まなければならない。
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