北朝鮮の延坪島（ヨンピョンド）砲撃挑発以後、開城（ケソン）工業団地の存廃を巡り、議論が高まっている。０４年末から稼動している開城工業団地は、北朝鮮の解放改革を繰り上げる尖兵の役割を果たすという期待があった。しかし、北朝鮮の挑発が繰り返されていることから、今や、開城工業団地に滞在している国民が、ともすれば北朝鮮の「人質」になりかねないという懸念が高まっている。
先月２３日、北朝鮮が延坪島挑発を行った際、政府が最も苦心したことの一つが、当時開城工業団地に滞在していた国民７７８人の安全問題だった。北朝鮮が開城工業団地への出入りを禁じると、軍事作戦を除き、国民を救出する方法がないからだ。北朝鮮は昨年３月、韓米連合軍事練習の「キー・リゾルブ」を問題視し、開城工業団地への出入りを禁じた前例がある。
一方で、開城工業団地の閉鎖は、政府が独自的に取ることができる事実上、唯一の対北朝鮮制裁でもある。哨戒艦「天安（チョンアム）」爆沈事件以後、政府が発表した５・２４措置に北朝鮮船舶の韓国領海運航の禁止、南北交易の中断、対北朝鮮新規投資の禁止など、政府が取ることができる制裁は殆ど含まれているため、現在、残っているカードが他にないからだ。
開城工業団地で働く北朝鮮労働者は９月末現在４万４５２４人で、平均給料は約９０ドル、今年北側労働者に支給する賃金は約５０００万ドル（約５７３億ウォン）だ。開城工業団地が閉鎖されると、国内総生産（ＧＤＰ）が２４７億ドル（０８年基準）に過ぎず、これといった外貨輸入元のない北朝鮮としては、少なくない打撃を被るものとみられる。
このため、保守層を中心に今回の挑発を機に、開城工業団地を完全閉鎖という声が高まっている。１日、行われた時局討論会で、盧在鳳（ノ・ジェボン）元首相は、「開城工業団地を閉鎖し、北朝鮮に強力なメッセージを送れ」と注文をつけ、金寛鎮（キム・グァンジン）新任国防部長官も３日、国会人事聴聞会で、「北朝鮮の追加挑発に対応するため、開城工業団地の閉鎖問題は、必ず検討する必要がある」と強調した。市民団体の自由連合は６日、対北朝鮮糾弾大会を開き、軍事的措置と共に開城工業団地の閉鎖を要求した。
しかし、政府当局者は８日、「長期的な統一政策の観点から、開城工業団地の閉鎖による損得を綿密に計算してみなければならない」とし、「北朝鮮が追加挑発を行ったら、状況が違ってくるかも知れないが、今、現在、開城工業団地の閉鎖問題は議論していない」と話した。統一部は延坪島挑発直後、開城工業団地への訪問を全面禁止していたが、徐々に統制を緩和し、８日には入居企業の交代人員１０５人、貨物運送労力１００人など２１６人が開城工業団地を訪問した。
開城工業団地を閉鎖すると、南側も約１兆３６００億ウォンの損失（国会立法調査処推算）を被る上、入居企業への補償問題もあるため、政府としては深く悩まざるを得ない。さらに、５・２４措置で南北間のチャンネルが殆ど途絶えた状態で、開城工業団地は事実上、唯一の南北接触の窓口の役割をしているという点を政府は重視している。北朝鮮としても、開城工業団地の維持が必要なだけに、北朝鮮が開城工業団地の労働者を直接威嚇する可能性は高くないというのが、政府の判断だ。
学会でも意見が分かれている。アン・ソンホ忠北（チュンブク）大学教授は、「安保が何より先なので、開城工業団地は段階的に閉鎖するしかない。南北間の対話のチャンネルが必要なら、他の方式で作ればいい」と指摘した。反面、チョ・ヨンギ高麗（コリョ）大学教授は、「まだ開城工業団地閉鎖に対する世論が否定的だ。中国、ロシア、欧州などの投資を受け、国際工業団地化することによって、開城工業団地に対する北朝鮮の排他的な影響力を制限する案が考えられる」と提案した。
will71@donga.com
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