世界的著名人やメディアが押し寄せる国際行事は、テロ団体やテロ犯らにとっては、自分の存在や名分を誇示できる、またとないのチャンスとなる。オリンピックやサッカーのワールドカップのような国際スポーツイベントや、世界各国の指導者らが出席する首脳会議や国際会議が、たびたびテロの標的となる理由でもある。01年の同時多発テロ以降は、航空機やホテル、大型ビル、軍事や宗教施設が、たびたびテロの的となった。テロにも、「最小限のコストで最大の効果(被害)を狙う」という経済論理が働いている。
◆今年11月、韓国で開催される金融サミット(G20)首脳会議は、先進国首脳らが一堂に会する場であるため、国際的テロの標的になりかねない。韓国は1986年のアジア大会や1988年のソウル五輪、02年のサッカーワールドカップ、05年の釜山(ブサン)アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議、昨年は済州(チェジュ)での韓国ーASEAN特別首脳会議のような大型国際行事を無事に開催した経験がある。しかしテロへの備えに油断は禁物だ。特に、北朝鮮はいつも気になる存在である。
◆国内で犯罪や不法行為を犯し、強制退去となった外国人が改名したり、偽造・変造したパスポートで再入国しようとして摘発された事例が毎年、2000件に上るという。G20首脳会議を控え、テロへの備えにさらに万全を期さなければならない必要性に気付かせてくれる。偽のパスポートや名前を変えて再入国する外国人は、強制退去の外国人資料写真や顔面認識プログラムにより摘発されるケースが多い。しかし、顔面認識プログラムの精度が低く、ひとまずは再入国に成功して、後で摘発された外国人だけでもこの半年間で1037人に上る。先月に逮捕された自称タリバンのメンバーは、兄の名前で作ったパスポートを持って、5年間17回も韓国に入国していた。
◆盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代の03年末に、「人権侵害の余地が多い」ことを理由に廃止された外国人指紋登録制度を再び復活させてこそ、このような問題を解決できる。外国人の指紋が登録されていなければ、テロ事件はもとより、外国人によるさまざまな犯罪の現場で、指紋を採取しても身元を確認できるすべがない。いわば、「ダミー事件」にならざるを得ない。米国や日本でも実施している外国人の指紋や顔写真の登録を、我々だけやらない理由などない。韓国は決して「テロの無縁地帯」ではない。
權順澤(クォン・スンテク)論説委員 maypole@donga.com