米国のベストセラー・リストにはテクノスリラー(technology thriller)でないものは見かけられないほど、この分野の小説が人気だ。医学なら医学、法律なら法律など、特定分野の専門知識を土台に描かれ、そのものが一本の映画のようにドラマチックに展開されるのが特徴だ。反転が繰り返される構造なので、結末を容易に推測できず、読者は小説の登場人物と絶えず頭脳戦をしなければならない。ハリウッド映画のネタとしてはこれほどのジャンルもない。
◆テクノスリラーを書くためには、専門家も舌を巻くほどの専門知識と小説構成能力が求められる。スティーブン・キングのような例外があることはあっても、その分野の専門家が転業して作家になったケースが多い。「突然変異」「コマ」など、メディカル・スリラーを開拓したロビン・クック、「ジュラシック・パーク」「プレイ」の作家マイケル・クライトンは、ハーバード大学医学部を卒業した医者出身だ。「ペリカン文書」「レインメーカー」「依頼人」を書いたジョン・グリシャムは弁護士だ。
◆最近、わが国でもこのジャンルの人気が並大抵でない。スティーブン・キング、ダン・ブラウンのような作家の作品を読み、「CSI科学捜査班」や「ハウス」といった米国ドラマを見て育った世代が登場したからだろうか。しかし、韓国的な状況や目線に合うテクノスリラーはなかなか見かけない。科学や未来を題材にしたものは尚更だ。米国のように専門家が作家に転業することがなく、作家はテクノスリラーを書くほどの専門知識を持っていないからだ。作家らがこの分野を「通俗的」と言い、忌避するためでもある。
◆「不滅の李舜臣(イ・スンシン)」の作家、金タクファンKAIST教授と「チョン・ジェスンの科学コンサート」の著者チョン・ジェスンKAIST教授が、本格的なテクノスリラーを標榜した作品を東亜(トンア)日報に連載し始めた。金教授はジョン・グリシャムとマイケル・クライトンから小説の書き方を学んだと言っているほど、この分野のマニアだ。チョン教授は、農科学やロボットなど科学素材で存在の意味を問うと言っている。作品のタイトルは創造論を反論したリチャード・ドーキンス・オクスフォード大学教授の本のタイトルの「盲目の時計職人」をそのまま借用した。科学者と作家が一緒に描き出す想像力の変奏で、朝刊を読む喜びがもう一つ増えそうだ。
鄭星姫(チョン・ソンヒ)論説委員 shchung@donga.com






