李明博(イ・ミョンバク)政府発足後、初めての大統領府秘書陣の人選の時の話だ。当時、李相得(イ・サンドク)国会副議長のチャン・ダサロ秘書室長は、ある記者から、「(あなたが)大統領府の政務秘書官になるそうだが、本当か」と尋ねる電話を受けた。驚いて、あちこち調べたところ、事実だった。にもかかわらず、李副議長からは何の言葉もなかった。もどかしくなり、午後11時頃、李副議長宅を訪ねると、李副議長は、自分も知らなかったように、「そうか?」と問い返したが、しばらくして、「知っていた」と言ったという。権力周辺の常識では、納得できないことだった。
◆最近、民情首席室に席を移したチャン秘書官は、私的な席で当時を思い出して、「李相得議員はそんな人だ。自分の秘書室長であっても、大統領の人事に対しては、あれこれ言うことはない」と述べた。チャン秘書官は、全斗煥(チョン・ドゥファン)政権時代、民正党の公認5期で政治に足を踏み入れて以来、李会昌(イ・フェチャン)総裁の補佐官、党の副スポークスマンなどを務め、権力の裏側を深く見ることができた。彼は、「(李議員が)企業のオーナーの下で経営を長くしたためか、過去の権力者とはスタイルが違うようだ」と話した。李議員は、コーロンの最高経営者(CEO)だった。
◆しかし、世間の視線は違う。「万事兄通(すべては兄経由で)」という言葉まで出るほどだ。李議員は5日、国会本会議場で、「国会政務委議員の性向分析」というタイトルの文書を見ている姿がカメラに撮られ、再び話題になった。文書自体はそれほど大したものでないかもしれない。この程度の文書は、ソウル汝矣島(ヨウィド)ではいつも出回る。しかし、洪準杓(ホン・ジュンピョ)院内代表が指摘したように、「大統領の兄弟に情報を与え、利益を得ようとする人」が提供したなら、事情は異なる。
◆李議員は11日、東京で、「大統領の親類の弊害やオーナー経営の問題は、誰よりも私がよく知っている」と述べた。企業CEO出身であるうえ、当選6回の国会議員だから、間違った言葉ではないだろう。しかし、必ずしも人事や利権に介入することだけが問題になるのではない。殺伐とした時代には、「万事兄通」という言葉自体が、国民にはストレスになり得る。李議員は、「私に何か罪があるのか」と言ったが、韓国社会では、「大統領の兄」であることが罪になるかもしれない。
金昌赫(キム・チャンヒョク)論説委員 chang@donga.com






