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[オピニオン]「チャン」と「チ」

Posted February. 05, 2004 23:10,   

私の大学先輩の中に、ことさら正反対の能力を持つ人がいる。数千もの電話番号を覚えているのに、大の地理音痴なのだ。各種案内を問い合せる電話はもちろん、高校時代の下宿の電話番号まで詳細に記憶している彼を見て、人々は驚きを禁じえない。ところが、道探しに限っては、事情が180度違ってくる。海外で駐在員勤務をしていたとき、日ごろ走っている高速道路で自宅方面の出口(Exit)を見失ってしまい、1時間あまりもさ迷ったことがあるほどだ。

◆最近、韓国では「チャン(何事においても一番という意味)」シンドロームが巻き起こっている。特定の人に対する支持と愛情を表す「ノ(盧)チャン」「ソン(宋)チャン」「アン(安)チャン」「ヒョリ・チャン」から、身体的、人間的な魅力を意味する「オル(顔)チャン」「モム(体、プロポーション)チャン」「マム(心)チャン」、特別な能力を意味する「サム(喧嘩)チャン」「チュム(踊り)チャン」「マル(話し上手)チャン」を超えて、手配中の二枚目特殊強盗を指す「カン(強盗)チャン」、そして美貌と話術で公認候補に選ばれた、若き「政治オルチャン」に至るまで。チャンは、日本語で名前の後ろに付けられる愛称の「ちゃん」から来ているという話もあるが、上位の役職または、その職に就いている人を指す、韓国語の「長(チャン)」が語源であるという説の方が有力だ。

◆ところで、チャンの反対は「チ(痴)」である。「ウムチ(音痴)」「モムチ(踊りや運動が下手な人)」「ギルチ(地理音痴)」「キゲチ(機械音痴)」などが、これに当る。もちろん、音痴の外は、いずれも語法に合わないものばかり。あとは皆、音痴から類推して創り出した言葉で、チは、もはや接尾語と化した感じさえある。さらにチは、「イチ(この者)」「チョチ(あの者)」「チャンサチ(あきんど、商人)」のように、最後尾に付いて、相手に対して見くびった呼び方をする際に使われる。朝鮮王朝時代の「ピョンチ」という言葉は、実力を持っていながら、中央の政界に進出することができなかった、平安道(ピョンアンド)の人々を見下して言った言葉だった。

◆特定分野のチャンは、他の部門のチである場合が多い。チャンがチになり、チがチャンとなるのも一瞬だ。インターネット上で、チャンが「最高を意味する言葉」であるという意味とともに「チャズン(嫌気)」の略語、という解釈が出まわっているのも、それなりの意味があると思う。チャンに対する崇拝が過ぎると、嫌気が差すということも有りえるのだ。逆に、チがチャンになるケースもある。最近、ある女性タレントは、音痴であるという短所をむしろ売り込むことで、爆発的な人気を博している。神様は、一人の人間に、決して2つの祝福と才能を同時に与えない、という事実にほっとするばかりだ。

呉明哲(オ・ミョンチョル)論説委員 oscar@donga.com