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[オピニオン]母親の愛のように

Posted June. 08, 2023 08:59,   

Updated June. 08, 2023 08:59

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ラファエロが聖母と赤ん坊のイエスを描いた聖母子像の規範を作り出したなら、ラファエロの影響を受けたサッソフェラートは独立した聖母の肖像画でキリスト教美術史に一石を投じた。英ロンドンのナショナル・ギャラリーが誇る「祈りの聖母」(1640~50年・写真)がサッソフェラートの代表作。

サッソフェッラートは1609年、イタリア・マルケのサッソフェッラート村で生まれた。本名はジョヴァンニ・バッティスタ・サルヴィだったが、出身地の名前で活動していた。21歳から修道院のための祭壇画を描いていたサッソフェッラートは、特に聖母の肖像画が得意で人気があった。マリアはイエスの母であるため、徹底して理想化されなければならなかった。凡庸な隣家の女性として見られては絶対にいけない。サッソフェッラートは深い闇の中で聖母が祈る姿を描いた。けがれのないきれいな肌、穏やかな眼差し、優しく合わせた両手、優雅な衣装や姿勢など、献身的でありながら理想的な天上の女性像を作り上げた。

等身大で描かれたこの絵の前に立つと、まるで聖母が私たちの前で祈っているかのようだ。画家は、シンプルで暗い背景と対照的に、聖母の衣装をリアルでありながら際立たせて描いている。色は白、赤、青の3色に限定し、その中でも光を受けたマントの強烈な青が私たちの視線を圧倒する。「ウルトラマリン」と呼ばれるこの色は、青の中でも最も素晴らしく貴重な顔料だった。アフガニスタンの鉱山で採掘された靑金石を輸入して粉砕して作られたウルトラマリンは、その鮮やかな色のために画家たちに人気があった。しかし、金と同じくらい価格が高く、聖母の服のように絵の中で最も重要な部分だけに限定的に使われた。

ウルトラマリンは保存さえすれば永久的な顔料であり、信仰と従順、献身と愛など、聖母を象徴するこれらの言葉もキリスト教では永遠に変わらない価値だ。絵の中の聖母は暗い世界に背を向けて、私たちのために永遠に祈っている。ウルトラマリンのように強烈に、母の愛のように濃く。17世紀の絵が今も愛される理由も、その慰めのメッセージのためではないだろうか。