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イスラエルが「イラン戦争」で失ったもの

Posted June. 10, 2026 08:39,   

Updated June. 10, 2026 08:39


今年2月28日に勃発した「イラン戦争」で、イスラエルは受益者とみなされている。同盟国の米国とともに戦争を始め、40年以上にわたって目の上のたんこぶだったイランを集中的に攻撃した。イランの軍事施設を大規模に破壊し、政府や軍指導部の中枢関係者も多数排除した。

国境を接する敵対国レバノンへの攻撃も執拗に続けた。これによって、親イラン、反イスラエルを核心的価値として掲げてきた武装組織ヒズボラの影響力を大きく弱体化させた。また、中東の主要産油国であり、アラブ世界のみならず国際社会でも大きな影響力を持つアラブ首長国連邦(UAE)とは、イランの攻撃を防御する過程でさらに緊密な安全保障関係を築いた。イスラエルのネタニヤフ首相は「イスラエルはかつてなく強くなった」とも主張した。

しかし、今回の戦争におけるイスラエルの「国益バランスシート」がプラスだと判断するのは時期尚早だ。

何よりも、イスラエルの国家イメージが大きく損なわれているためだ。戦争の長期化とホルムズ海峡封鎖によって多くの国がエネルギー確保に苦しむ状況に陥ったにもかかわらず、イスラエルは事実上、露骨に米国とイランの交渉を妨害した。特に、イランが強く反発してきた対レバノン空爆を継続して実施した。トランプ米大統領でさえ、こうしたイスラエルの行動に何度も強い不満を示した。

イスラエルは安全保障のための措置だと主張する。しかし、パレスチナ自治区のうちガザ地区に比べてはるかに安定し、穏健派が多いヨルダン川西岸でも、国際社会が違法と規定する「イスラエル人入植地」を拡大している。また、ヒズボラに対する軍事作戦を理由に、レバノン南部には地上軍を駐留させている。

いくらでも「交渉妨害者」「加害者」「占領者」と呼ばれかねない姿を見せているのだ。

実際、世界各国でイスラエルに対する印象は大きく悪化しつつある。米世論調査機関ピュー・リサーチ・センターが今年2~5月に36カ国で調査を行い、今月4日に発表した「イスラエルに対する認識調査」によると、米国、英国、フランス、ドイツ、日本、カナダ、イタリアなど主要7カ国(G7)で「イスラエルに否定的にみる」と答えた割合は、昨年6月発表時より最低4ポイント、最大9ポイント上昇した。特にドイツ(64%→73%)、イタリア(66%→75%)、英国(61%→69%)、米国(53%→60%)で上昇幅が目立った。

イスラエル国内でも、自国のイメージ悪化に対する深刻な懸念が提起されている。イスラエル国家安全保障研究所(INSS)が先月公表した「国家安全保障への脅威となるイスラエルのイメージ悪化」と題する報告書は、イスラエルが軍事的成果を上げた一方、多くの国で国際法に違反する攻撃的な国家、さらには「(国際社会の)のけ者国家」と見なされていると指摘した。

国際社会における国家イメージは、その国の安全保障にも大きな影響を及ぼし得る。特にイスラエルのように同盟国との協力や国際社会の支持を必要とする国ではなおさらだ。これまでイスラエルがパレスチナとの紛争で過剰な対応を繰り返しても、西側諸国を中心とする国際社会がある程度容認してきた背景には、ナチス・ドイツによる「ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の被害者」という認識があったのも事実だ。

そうした点で、今回の戦争を経て自国に対する否定的な認識が広がり、さらに「攻撃者」「のけ者国家」というイメージまで形成されつつあることは、イスラエルにとって決して軽視できない問題だ。将来協力できる相手がそれだけ減る可能性があるためだ。イランへの軍事的圧力、レバノン国境地帯の掌握、ヨルダン川西岸での入植地拡大といった「現在の成果」が、長期的にはイスラエルの国益バランスシート上、いくらでもマイナスになり得るということだ。