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最も低い場所から

Posted December. 25, 2025 10:24,   

Updated December. 25, 2025 10:24


キリスト教文化圏において、イエスの誕生は長く画家たちに愛されてきた題材である。降誕のイメージは、たいてい光と栄光に満ちている。天使たちが天を切り裂くように舞い降り、生まれたばかりのイエスはすでに神性を放ち、聖母は理想化された存在として描かれる。しかし、17世紀イタリアの画家カラヴァッジョは、こうしたおなじみの図像をきっぱりと拒否した。

「羊飼いの礼拝」(1608~09年、写真)は、当時イタリア・メッシーナを統治していた元老院の依頼を受け、カプチン会が運営する教会の祭壇を飾るために描かれた作品である。制作当時のカラヴァッジョは、殺人容疑でローマを追われ、逃亡の末にメッシーナへたどり着いていた。物議を醸す画家ではあったが、その才能を高く評価した地元の貴族たちは、喜んで彼の後援者となった。

絶え間ない不安の中で生きていた画家が描いた降誕は、華やかな祝祭ではない。画中の聖母は天上の存在ではなく、出産と移動に疲れ切った一人の若い母である。古びてみすぼらしい馬小屋の床に半身を横たえ、幼子イエスを守るように抱き寄せている。茶色の修道衣をまとったヨセフと羊飼いたちは、その光景を慎み深く、敬虔に見守る。自らの顔が描き込まれることを期待していたであろう元老院の貴族たちをよそに、カラヴァッジョは貧しく過酷な生活を送る労働者階級の人々をモデルに選んだ。

光もまた、壮麗ではない。かすかな光が、人物の一部を辛うじて浮かび上がらせるだけだ。後光はほとんど判別できず、天使も姿を見せない。

カラヴァッジョは、降誕を奇跡の場面ではなく、現実の出来事として描いた。神性は光と栄光の中ではなく、人間が置かれた最も低い条件の中で、静かに現れるのだと示す。救いもまた、床に身を横たえる母の手つきのように、最も低い場所から、最も弱い存在へと差し伸べられる保護の身振りから始まる――そんなメッセージが読み取れる。おそらく、その救いを最も切実に求めていたのは、追われる身として生きていた画家自身だったのだろう。