
韓国経済の次世代成長エンジンの育成を掲げる150兆ウォン規模の「国民成長ファンド」が11日、始動した。李在明(イ・ジェミョン)政権は、人工知能(AI)、半導体、ロボットなど先端産業分野に重点投入する計画だ。各国政府が先端産業育成を競う「国家対抗戦」が激しさを増す中、意義ある試みだとの評価は多い。だが、歴代政権の「官製政策ファンド」が政権交代後に立ち消えになった前例を繰り返さないためには、政治色を極力排し、収益性と持続性を高めなければならない。
国民成長ファンドは、政府保証債で構成する先端戦略産業基金75兆ウォンと、金融界などの民間資金75兆ウォンを合わせた総額150兆ウォンの枠組みだ。AIに30兆ウォン、半導体に20兆9000億ウォン、電気・水素自動車などモビリティに15兆5000億ウォンなど、11の次世代先端産業へ5年間投資するという。出資などを通じ、有望スタートアップを企業価値10兆ウォン以上のベンチャー企業を指す「デカコーン」に育てることも目標に掲げた。
主要国の企業が、政府補助金や税制支援に加え、政府出資基金の支援もすでに受けている現実を踏まえると、今回のファンド造成はむしろ遅いとの見方もあろう。中国は2014年以降、3度にわたり「ビッグファンド」を造成し、半導体分野だけで144兆ウォンを投じている。日本政府も、トヨタ、ソニー、キオクシア、ソフトバンクなどが出資する半導体企業ラピダスに27兆ウォンを投資している。
それでも懸念が残るのは、歴代政権の官製ファンドが後味の悪い結果を残してきたからだ。元本損失を政府財政で補填する仕組みを伴った文在寅(ムン・ジェイン)政権の「ニューディールファンド」は、多くが十分な収益を上げられないか損失を出した。朴槿恵(パク・グンヘ)政権の「統一ファンド」は事実上、名称だけが残る状態だ。李明博(イ・ミョンバク)政権下で活性化された「油田ファンド」も、多くの投資家に損失を与えた。事業性を厳密に見極めず、政権の短期目標の達成に焦点が置かれた結果である。
趣旨がいかに立派でも、収益を生まないファンドは結局、失敗作だ。政府保証の下で国策銀行などが発行する75兆ウォンの債券は、利払いまで伴う広い意味での「国の借金」に当たる。金融界と国民から調達する残り75兆ウォンも、適正な収益を上げられなければ、本来向かうべき資金を不適切に固定化させることになる。官製ファンドの失敗例に、このファンドが新たに加わることのないよう、政府は何より厳格な投資対象の選定と透明な運営に細心の注意を払うべきだ。






