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務安惨事の真相究明を遅らせた国会

Posted December. 09, 2025 11:01,   

Updated December. 09, 2025 11:01


搭乗客181人のうち179人が死亡した昨年12月29日の済州(チェジュ)航空旅客機事故は、韓国国内で発生した航空事故の中で最も多くの犠牲者を出した惨事だった。発生から1年が迫るが、事故原因はいまだ霧の中だ。韓国国土交通部傘下の航空・鉄道事故調査委員会(調査委)は今月初め、公聴会を開いて中間調査内容を発表する予定だったが、遺族の反発で白紙となった。遺族が反発したのは、事故の責任から自由ではない国土交通部所属の調査委による「セルフ調査」は信頼できないという理由からだ。

遺族は事故直後から独立した調査機構を求めてきた。事故から約10日後、調査委を首相室に移管する航空鉄道事故調査法改正案が国会に提出され、与野党ともに国土交通部からの独立の必要性に共感した。しかし改正案は今月初めになってようやく国会国土交通委員会の小委員会を通過した。

国会の最初の関門を通過するのに11カ月もかかったのは、国土委の議論過程で「異論」が出たためだった。調査委を独立させれば調査業務の連続性と専門性が低下し、政府組織の原則を揺るがしかねないという慎重論だった。そうした意見を述べた委員の発言の行間を読むと、遺族の要求に押されて国土交通部の組織を切り離すことへの拒否感がうかがえた。

むろん政府組織の改編は慎重でなければならない。しかし今回の問題は、調査委の「生まれ持った限界」を正すことだ。2002年設立の調査委の事故調査業務は国土交通部長官が関与できないよう法律に明記されている。だが人事や予算などは国土交通部長官の指揮を受ける。調査委委員12人のうち2人の常任委員は国土交通部の高位公務員枠だ。航空政策や規制関連省庁から完全に独立した米国家運輸安全委員会(NTSB)、議会直轄のカナダ運輸安全委員会(TSB)と比べれば、独立性が不十分だ。10年前、国土交通部傘下の韓国交通研究院でさえ、調査委中長期発展計画報告書で「国土交通部に対する事故調査の客観性が疑われる可能性がある」と指摘したほどだ。

さらに事故をめぐって国土交通部と調査委に対する信頼はすでに地に落ちている。国土交通部は、務安空港の「コンクリートの盛り土」こそが事故の被害を拡大させた原因として指摘されるとし、しばらく「規定上問題はない」と責任逃れに汲々とした。調査委は7月、パイロットの過失とも解釈されかねないお粗末な内容を発表し、物議を醸した。

国土交通部傘下の調査委は、遺族の言葉を借りれば「最初からボタンのかけ違い」だった。十数年沈黙しておきながら、独立機構の議論が始まると業務専門性や政府組織の混乱を理由に反対するのは、別の意図があるのではないかという疑念を招くだけだ。

遅ればせながら調査委独立機構の発足が第一歩を踏み出したとはいえ、改正案が国会本会議など残された手続きを電光石火で進めたとしても、調査の遅延は避けられない。改正案には、法施行と同時に既存の調査委の任期を終了させる内容が含まれており、新たな調査委を構成するための物理的時間を要するためだ。

調査委独立法案を提出した議員は国会常任委の初会議で「牛を失っても牛舎を直せないほど愚かなことはない」とし、法案の早期処理を強調した。一部議員の安易な認識のせいで真相究明はさらに先送りされ、遺族には苦痛の時間だけが長引くこととなった。