株式市場が上下に揺れる日もあるが、個人投資家の熱気は衰える気配がない。KOSPIが下落局面に入っても、外国人投資家が一斉に売りを浴びせるのとは対照的に、アリと呼ばれる個人投資家は押し目買いで市場を支えている。そのせいか、最近は「午前9時前後になると会社のトイレが混み合う」という冗談めいた話まで聞こえてくる。開場と同時に個室へ駆け込み、スマートフォンの株価画面を開く会社員がそれほど多いというのである。「9時にはもう空きがないから、少し早めに行った方がいい」と耳打ちする人までいた。
株式市場が活気づくこと自体は、投資家にとっても韓国経済にとっても望ましい。韓国の株式市場は長らく金融当局にとって悩みの種だった。経済規模に見合うだけの成長が進まず、話題に上るたびに、株価育成に責任を感じる当局者の表情が曇った。企業業績が堅調でも、市場は「ボックス圏」から抜け出せず、まるで裕福な家の成績不振の子どもを勉強させるかのように、当局はさまざまな対策を打ち出してきた。それでも潮目を変えられない日が続いたが、最近ようやく見慣れない水準の指数を目にするようになり、市場に久方ぶりの高揚感がただよい始めている。
社会に出たばかりの若い世代を中心に、投資に小さな手ごたえを感じる個人投資が多い。高騰し続ける不動産市場に取り残されるのではないかという「FOMO(取り残されることへの恐怖)」を、株式投資で埋め合わせている面もあるだろう。
しかし、勤務時間に手を止めてトイレへと急ぐ会社員の心境を思うと、複雑な感情が残る。「もはや株式以外に資産を増やす手段がない」と感じているのかもしれない。実際、そう考えざるを得ない環境になりつつある。物価は着実に上昇する一方、「上がらないのは自分の給料だけだ」と嘆く声は後を絶たない。賃金が上昇しているとはいえ、インフレの速度に追いつかないのが実情だ。10年前の消費者物価上昇率は0.7%にすぎなかったが、今年はほぼ毎月2%を超える。国家データ庁によれば、今月4日時点での月平均給与は前年比2.7%増にとどまり、10年前の3.1%より鈍化している。
賃金上昇速度が物価に追いつかない状況では、「働くことの価値」が軽んじられる風潮が広がりがちだ。最近会った40代の企業チーム長は「朝から株価を見る余裕もなく仕事に打ち込んできた自分だけが、結局は損をした気分だ」とこぼした。若いMZ世代を中心に「役員より不動産オーナー」といった言葉が共感を呼ぶ社会でもある。
「懸命に働くより投資に力を入れる方が得策」という空気が強まれば、働く人々のメンタルにも悪影響を及ぼし、企業の生産性にも跳ね返ってくる。株価チェックの瞬間と同じだけの期待を給与明細にも抱ける社会にするには、成長企業がもっと増えなければならない。半導体に集中している成長の勢いを、他産業にも浸透させる努力が必要だ。とはいえ、短期間で賃金を大きく引き上げるには、内外の環境は決して簡単ではない。
だからこそ、企業は成長への取り組みと並行して、賃金体系も見直す必要がある。職務価値と成果に基づく賃金と報酬制度を定着させていかなければならない。政府は資本所得への課税が労働所得に比べて低いという指摘を忘れてはならない。投資ブームの中で配当所得の分離課税に強い反発が起きた経緯を踏まえれば、大幅な制度改革を直ちに進めるのは難しい。それでも、資本所得と労働所得の不均衡は、長期的には解消されるべき課題である。
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