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このままKブレインと別れれば、「ゴールデンタイム」を永遠に逃す

このままKブレインと別れれば、「ゴールデンタイム」を永遠に逃す

Posted June. 04, 2025 09:10,   

Updated June. 04, 2025 09:10


「あの時、中国の学界からの提案を受けた時、行くべきだったのかもしれない」

ソウルの名門私立大学の名誉特任教授のこの嘆きには、今日の科学技術界が直面している危機が色濃く表れている。大学は、理工系の権威として知られる彼が定年後も研究を続けられるよう「名誉教授」という肩書を与えた。しかし、実質的な研究支援はなく、名ばかりの地位だった。彼は韓国に残るという選択を後悔しているという。

科学技術の覇権競争が激化する中、海外では優秀な若手科学者や定年が近づいた学者に対して、数十億ウォンに及ぶ研究費や高額な給与、住宅手当などを保証するとして誘いをかけている。そのため、多くの韓国の科学者が心を揺さぶられている。

最近、東亜(トンア)日報と韓国科学技術翰林院が共同で実施した調査によると、韓国の理工系学者200人のうち61.5%が過去5年以内に海外からの招聘提案を受けたと回答した。そのうち42%は実際に提案を受け入れたか、検討中だという。韓国の科学技術界を支えてきた重要な研究者が次々と海外へ流出しているということだ。提案を受けていない学者のうちでも、80%以上が今後提案があれば前向きに検討すると答えた。

海外の研究機関は、研究者に合わせた条件を提示し、韓国の学者たちの心を揺さぶっている。若く優秀な科学者には破格の給与と研究費を提案し、定年を控えた学者には長期的な研究環境を保証するという形だ。

一方、韓国では、政府の研究開発(R&D)予算が安定せず、定年後の活用制度が欠如しているうえに、不必要な行政手続きが研究者を追い詰めている。政権が変わるたびに揺れるR&D政策は研究者に不安を与え、研究費の契約すら信用できないという絶望感が海外流出の引き金になっている。「論文よりも研究費を獲得するための提案書や成果報告書に気を使わなければならないこの国で、どうやって研究に没頭できるのか」と語る、韓国を離れた若手科学者の声にも耳を傾けるべきだ。

海外へ流出するのは単なる「個人」研究者ではない。特に学者たちは、長年蓄積した研究能力やノウハウ、学界ネットワークを丸ごと海外へ持ち出す。彼らの成果は招聘国や機関の名前で論文に掲載され、特許や知的財産権も他国に渡る可能性が高い。結果として、科学技術覇権時代に国家競争力が低下することになる。だからこそ、国内の学者を「小さな研究所」、国家の資産として認識する必要がある。

新政権が発足した今こそ、科学技術界の「ゴールデンタイム」だ。人材を守れなければ未来はない。韓国の科学技術政策は、短期的な予算配分や華やかなスローガンから脱却する必要がある。若手研究者であれ、定年を控えた学者であれ、「ここで研究を続けたい」と確信できる環境を提供しなければならない。それこそが真の国家競争力であり、流出を防ぐ最も現実的かつ根本的な解決策だ。

今、トランプ米政権が科学技術予算を削減し、米国内の科学者が大量に流出している。この状況は、韓国にとって絶好の機会となるかもしれない。国内の人材を失うことなく、優秀な在米科学者や海外の人材に働きかけることで、科学技術覇権国家へと飛躍するための強固な基盤を確保しなければならない。