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核を使っても生き残った北朝鮮、「2つの戦争」シナリオの警告

核を使っても生き残った北朝鮮、「2つの戦争」シナリオの警告

Posted May. 29, 2025 09:04,   

Updated May. 29, 2025 09:04


「北朝鮮政権が核兵器を使用して生存できるいくつかのシナリオを示した」

米国のシンクタンク、大西洋評議会が12日(現地時間)に公開した報告書「ガーディアン・タイガー」図上演習(TTX=Table-Top Exercise)には、このような記述がある。

この演習シナリオは次のとおりだ。中国の台湾侵攻で始まった戦争が韓半島に拡大し、北朝鮮は韓国空軍基地に戦術核攻撃を強行する。北朝鮮の核使用責任を問うため、戦術核を開城(ケソン)付近に投下するかどうかを決定しなければならない状況。ここで米国チームのジレンマが発生する。

米国の核報復で戦術核交戦が連鎖的に発生する恐れがあり、韓半島の戦場に米国の戦力が集中投入された隙を突いて、中国が米中戦争が繰り広げられている台湾戦線への攻勢を強化し、台湾が陥落するという最悪のシナリオが展開される可能性があるということだ。つまり、2つの戦場への負担で、米国が北朝鮮への核報復を躊躇する可能性があることを意味する。

ペンタゴンだけでなく、在韓米軍関係者も参加したとされるこの演習が米政権内外で話題になったのは、米政権とシンクタンクが協業した図上演習という意味のほかに、台湾と韓半島という2つの戦線に対する米国の視点と現実的な懸念、悩みが含まれているからだろう。

そしてこの演習は、ここ数年間、韓米政府の北朝鮮に対する警告声明に欠かさず登場した「核使用時、金正恩(キム・ジョンウン)政権終焉」という文言が虚言になりかねない最悪のシナリオを示した。恒常化した中国という変数が、鉄壁と思われていた米国の対北朝鮮拡大抑止(核の傘)の実行に障害となり得るということだ。

米国で、中国の台湾侵攻だけでなく、台湾封鎖・隔離などいくつかのシナリオが言及されている現時点で明らかなことは、第2次トランプ政権のインド太平洋地域における安全保障政策が中国牽制に集中するということだ。米軍の戦略的柔軟性の拡大は、この観点から見れば、すでに予告されたようなものだ。韓米政府はいずれも否定したが、最近議論になった在韓米軍の撤収や域内再配置の規模(4500人)が9ヵ月ごとにローテーション配置される兵力規模と似ているのは偶然ではないかもしれない。

にもかかわらず、在韓米軍の役割と規模の変化、駐留経費の韓国側負担の再評価要求が盛り込まれたトランプ氏の「安保請求書」がいつ、どのように送られてくるかについて多くの当局者が心配する一方で、中国という変数にも米国の「核の傘」が適切に機能するかどうかに対する問題意識が見られないのは懸念される。

戦略的柔軟性の拡大が、在韓米軍の削減や駐留経費の韓国側負担増額の要求につながるのか、正恩氏とトランプ氏の「ビッグディール」のための手段として活用されるのか不確実な状況で、新政府はこの高次方程式を解くために「核の傘」強化に注目しなければならない。米国の戦略的柔軟性が中国牽制に重点を置いて拡大する中、その影響を避けることが難しいのであれば、むしろ「核の傘」をより確実に保証される機会と捉えるべきだ。米国の「核の傘」の運用過程において韓国が主体的に関与できるという現在の韓米核協議グループ(NCG)体制では安心できない。中国と北朝鮮の同時脅威がすでに既存の「核の傘」体制を揺るがす新たな安全保障の脅威として浮上している。報告書も「将来的には従来の抑止モデルが崩壊する可能性がある」と警告している。