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曖昧になる政府と民間の境界、マスク氏に触発された「越権」めぐる論争

曖昧になる政府と民間の境界、マスク氏に触発された「越権」めぐる論争

Posted February. 11, 2025 09:26,   

Updated February. 11, 2025 09:26

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米連邦政府を連日「切り刻む」ナイフを手にした、現在、米国で最もホットなニュースメーカー。実業家のイーロン・マスク氏の公的身分がはっきりと分かったのは比較的最近のことだ。

米政府効率化省(DOGE)のトップであるマスク氏が連邦政府職員の10%を削減すると圧力をかけ、財務省と消費者金融保護局(CFPB)の機密情報へのアクセス権まで手に入れ、「越権」という非難が殺到した。いくら大統領の最側近とはいえ、民間人だったマスク氏がいったい何の権限で過激な振る舞いをするのだろうか。

ホワイトハウスは3日(現地時間)、マスク氏が特別政府職員(SGE)に任命されたと公式発表した。SGEは、政府の専門性と敏捷性のために外部の専門家を1年間で最大130日まで臨時雇用できる制度だ。ホワイトハウスの中で公的業務を遂行するための最低限の条件が整ったのだ。

米国で過去の政権も活用してきたSGEは、一般政府職員より倫理規定と監督が緩く、透明性に対する懸念が提起されてきた。バイデン前大統領も民主党の長年のロビイストであるアニタ・ダン氏をSGEに任命した。その後、ダン氏は「SGEは財産開示の義務がない」という抜け穴を悪用したとして、利益相反論議を起こした。2016年、ヒラリー・クリントン国務長官(当時)も側近をSGEに任命し、政府内部の情報にアク

セスできるようにしたという指摘を受けた。

マスク氏も大枠では同様の批判を受けている。しかし、マスク氏は単なる政治ロビイストではない。テスラ、X、スペースXなど様々なグローバル企業を経営する世界トップの富豪実業家だ。トランプ氏をバックにつけたマイク氏の国際的な影響力と政治的地位は前例とは次元が違う。マスク氏が雇ったDOGEの若いエンジニアがどのような身分で雇用されたのかは明らかにされていない。

トランプ氏があれほど叫んできた「ディープステート(連邦政府官僚組織内の既得権集団)解体」作業の最前線に立っていた人物が、巨大な利益相反論議の中心に立っているということも矛盾している。米ノースカロライナ大学の憲法専門家であるマイケル・ゲルハルト教授は、「米政府で部外者がこれほど自由な権限を与えられたのは史上初めてだろう」と指摘した。

連邦裁判所は最近、DOGEが推し進める改革作業にブレーキをかけた。民主党も、「選出されていない権力が繰り広げるクーデター」と反発を強めている。逆に、保守陣営はマスク氏が振るう「ハンマー」を見て喜んでいると、政治専門メディア「ポリティコ」は伝えた。米紙ワシントン・ポストは、SGE制度自体が「政府と民間の境界」を曖昧にしていると診断した。マスク氏の作業がどちらの陣営からでも明確な支持を得られれば、このような「曖昧な境界」は阻止の対象ではなく、避けられない時代の流れになる可能性が高い。

SGE制度は、権力者の背後の側近が表裏で公然と活動する通路を設けた。さらに、マスク氏が彼らの権限をめぐる論議に本格的に火をつけた。選出されていない権力を透明に監視して公共の利益を守る方策が導き出されるのか、それとも新たな意味の「影の実力者」を強化する契機に転落するのか、興味深い観戦ポイントだ。