
「自由に街を歩き回り、人々の暮らしを観察し、ある程度の匿名性を維持しながら何の負担もなく執筆できる環境が作家にとっては一番良い環境です」
昨年ノーベル文学賞を受賞した韓江(ハン・ガン、写真)氏が、小説「別れを告げない」(2021年)の英語版「We Do Not Part」が今週、米国で出版されるのを記念して、ニューヨークタイムズとのビデオインタビューに応じた。同紙によると21日(現地時間)、韓氏は「ノーベル文学賞を受賞してから、ほとんどの時間を人々の目から遠ざかって過ごしている。最近の事件についても慎重に考えている」と語った。「済州(チェジュ)4・3事件」を題材にした「別れを告げない」は、これまで韓氏の主要作品を英語圏に紹介してきた米ランダムハウス傘下のホガース出版から出版された。
ノーベル文学賞を受賞してから、個別インタビューを固辞して隠れて生活している韓氏は、NYタイムズとのインタビューで「静かな執筆生活に戻ろうと努力している。小さな庭を見下ろす日差しのいい部屋で書いている」とし、「昨年植えた野花が雪に覆われているのが見える」と近況を話した。同紙は「作家のノーベル賞受賞は(韓国では)五輪金メダルのように祝われた」とし、「20代の息子は過度な関心にストレスを感じ、インタビューで自分のことに言及しないでほしいと頼んだ」と付け加えた。
韓氏はノーベル文学賞授賞式直前の12月3日に行われた不法戒厳に抵抗した市民についても言及した。「1979年と1980年の記憶が繰り返されてはならないということを知っていたので、彼らは真夜中に街頭に出た。そのように過去と現在がつながっている」と語った。また「韓国の辛い瞬間に対する個人的な経験を文章に書き、世界の残酷な被害者たち、彼らを決して忘れない人々との深い連帯感を感じた」とし、「死んだ記憶と生きている現在をつなげ、何も死なせないことは、韓国の歴史だけでなく、すべての人類に関することだ」と説明した。
同紙は、詩人として登壇した韓氏が小説を執筆する際、文章と単語の選択にどれだけ力を入れているかについてのエピソードも紹介した。韓氏は小説「少年が来る(Human Acts)」の編集過程で、音節一つ一つまで編集者と激しく討論したという。同紙によると、韓氏が編集者に冗談交じりに「私に何かが起こっても、私たちが議論した音節は文法が少し間違っていても絶対に勝手に変えないでください」と言ったと報じた。
パク・ソンヒ記者 teller@donga.com