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科学である「石油探査」を政治に巻き込んだのは政府だ

科学である「石油探査」を政治に巻き込んだのは政府だ

Posted June. 12, 2024 09:07,   

Updated June. 12, 2024 09:07

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大統領の口を経た瞬間、「科学」も「政治」に一歩踏み込むという事実を確認させた1週間だった。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は3日、就任後初の国政会見を開き、慶尚北道浦項(キョンサンプクト・ポハン)の迎日(ヨンイル)湾の深海の石油・ガス埋蔵の可能性を直接発表した。報告を受けて、大統領が直接会見を行う意向を明らかにしたという。政治的な配慮なしに、単に波及力の大きな科学的事実を国民に直接説明しなければならないという判断だったのかもしれない。しかし、大統領の「サプライズ発表」で第一歩を踏み出したことで、迎日湾の石油探査と開発は科学の領域だけにとどまらなくなった。

米アクトジオ社のビトール・アブレウ顧問は最近、東亜(トンア)日報に、「東海(トンへ・日本海)ですでに3回の掘削が行われたが、そのたびにこんなに爆発的に世論が盛り上がったのか疑問だ」と語った。アブレウ氏が最大140億バレルの石油とガスが埋まっている可能性があるという分析結果を出した迎日湾沖の深海で、韓国石油公社は2012年から3回掘削を行った。しかし、国民の大半は今回、その掘削孔の存在を知らなかった。政府発足後、最低に落ちた支持率と「担当局長が発表すればよかった問題」という政府内の評価は、世論が騒然となった理由の一端を示している。

科学的事実に過度な期待感を重ねたのも政府だった。安徳根(アン・ドクグン)産業通商資源部長官は、「140億バレルを現在の価値で計算すると、三星(サムスン)電子の時価総額の5倍程度」と述べた。石油探査と開発は科学だ。それに経済が加わる。そのため、専門家たちは「埋蔵量」という言葉から厳密に区別して使う。石油探査・開発で埋蔵量といえば、掘削を通じて存在の有無と経済的価値の両方を確認した量だ。つまり、不確実性なく検証された技術で商業的に生産できる量を意味する。担当長官が経済性はおろか、実際にあるかどうかも確認されていない量を約2200兆ウォンの価値があると説明したのだ。

合理的な判断ではなく、非合理的な過熱に満ちた投機にも火をつけた。大統領が探査掘削計画の承認を発表したのは午前10時頃だった。株取引が盛んな時間だった。すぐに「だからどの銘柄を買えばいいのか」という声があちこちで聞こえてきた。会社名に「石油」という二文字が入っているだけで株価が跳ね上がった。同日、ストップ高で取引を終えた韓国石油はアスファルト製造・流通企業で、石油掘削とはあまり関係がなかった。通常、株価に大きな影響を与える事項は取引終了後に発表される。来月になって初めて掘削を開始する探査作業を開場1時間後に急いで発表した理由が分からない。

政府と与党は、「野党が科学の領域まで政治化する」と言う。しかし、迎日湾沖の石油探査を政治に巻き込んだのは政府だ。さらに、政府と石油公社は野党の資料提出要求に「営業上の秘密」を理由に拒否している。アクトジオの分析結果を検証した諮問団の推薦方法に関する資料すら出さない。その一方で、公共機関が管理する情報を原文のまま公開する情報公開ポータルで部分公開していた資料を非公開に切り替えた。政府がすでに政治の領域に移行した迎日湾の深海石油探査・開発を再び科学の領域に戻すという考えなら、科学的議論の出発点である基本的なデータから透明に公開しなければならない。