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いざ「悪党」は別にいるのに、被害者同士が戦う不条理

いざ「悪党」は別にいるのに、被害者同士が戦う不条理

Posted May. 19, 2023 08:34,   

Updated May. 19, 2023 08:34

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夫が、会社の工場で焼死した。一夜にしてヘジョン(キム・ソンヨン)の世の中は、決して以前のようではなくなった。夫がどのように死んだのか、会社の過ちはないのか知りたいが、会社は防犯カメラを見せずに合意を促す。十日、一ヶ月、一年…。一緒に亡くなった職員たちの遺族とテントでの座り込みをするが、会社はびくともしない。何よりも辛いのは、一緒に座り込みをする下請け会社の職員の遺族たちの恨み混じりの目つきだ。「元請け所属の上級者だったあなたの夫が、管理監督をまともにできなかったので、私の子供が死んだのではないか」と。

これ以上耐えられなかったヘジョンは、会社から夫の命代を受け取る。その金で「ドリームパレス」のマンションを買う。しかし、マンションから錆の水が出て、次々と売れ残りになり、ヘジョンの世の中は再びひっくり返る。ヘジョンは、分譲が終わってから錆の修理をしてくれるという建設会社の主張に、直接分譲ビラを貼り付け、ヘジョンと同じ境遇で一緒に座り込みをしていたスイン(イ・ユンジ)は、建設会社の破格割引の分譲価格で住宅を契約する。これを知った入居者たちは、「住宅価格を台無しにするつもりか」とスインの入居を阻み、ヘジョンが割引分譲にかかわったと疑って追い立てる。苦しいほど現実的な映画「ドリームパレス」が、31日公開される。

ソウル龍山区(ヨンサング)のCGV龍山アイパークモールで17日に開かれた記者懇談会で、スイン役の俳優イ・ユンジは、「ドリームパレス」は「立場の違いに関する映画だ」と話した。映画は、一緒に座り込みながらも元請け下請け所属により異なる、同じ入居者でありながら分譲金額によって異なる人々の立場の違いを切るように鋭く対抗させる。カ・ソンムン監督は、「社会的惨事の責任者たちは自分の責任を放棄し、被害者同士で戦う。マンションが割引分譲をするのに、入居者が力を合わせて戦うのではなく、入居者同士で戦う。互いにかけ離れたことだが、同じ様子の話だ」と話した。続けて、「私たちはお互いを責めて戦うが、『悪党は別にいる』というのが映画の主題だ」と話した。

気が楽でない大変な内容だが、映画に没頭させるのはヘジョン役の俳優キム・ソンヨンのおかげだ。ドラマ「応答せよ1988」(2015年)でソンヨン役でよく知られている彼女の演技力は、今回の映画でも光を放つ。特に映画の最後に夫が死んだ過程を知り、顔にかすめる表情は彼女の演技人生で指折り数えられるシーンだと思う。彼女はこの映画で、先月イタリア・ローマで開かれた第20回アジアンフィルムフェスティバルで主演女優賞を受賞した。キム・ソンヨンは。「夫の命の代価を受け取って合意した人の人生に対する深い照明の響きがあった」とし、「40代の女優たちが、子供に対する愛ではなく、2人の女性の叙事を展開できる映画でとても嬉しかった」と話した。


崔智善 aurinko@donga.com