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「父のしずくは、痛い記憶を消すためのもがき」 ドキュメンタリー監督が見た父・金昌烈の素顔

「父のしずくは、痛い記憶を消すためのもがき」 ドキュメンタリー監督が見た父・金昌烈の素顔

Posted September. 28, 2022 08:53,   

Updated September. 28, 2022 08:53

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韓国抽象美術の巨匠、金昌烈(キム・チャンヨル)画伯(1929~2021)のニックネームはあまりにも有名だ。1971年の「夜の出来事」を皮切りに、ずっと水滴だけを描いて「水滴画家」と呼ばれる。

金画伯の次男で映画監督の金奧顔(キム・オアン)さん(48)は、いつも気になっていた。「なぜあなたは、一生数十万個のしずくだけを描く『隷属』を自ら選んだのだろうか」。その答えを探して、金監督はカメラを持った。

28日に公開されるドキュメンタリー「水滴を描く男」は、息子であり一人の芸術家である金監督が、父親に捧げる献辞であり、再解釈だ。ソウル鍾路区(チョンノグ)にある東亜(トンア)メディアセンターで26日に会った金監督は、「父親の作品は美しいが、美しいというイメージが内密な深さを隠してきた」とし、「画家の内面の苦痛と哲学の深さを見せようとした」と話した。

スクリーンで、金画伯は多様な面貌を現す。作業の時は孤独な修道僧のようだったが、過去を振り返ると一気に涙を流した。日本による植民地時代と韓国戦争を経験後、家族と離れて「一人で生き残った」という罪悪感が、一生胸を押さえつけた。金画伯は、「水滴はすべての記憶を消すためのものだ。すべての悪と不安を水で消したい」と打ち明けた。

撮影は容易ではなかった。金監督は、「父親という存在は、あまりにも近すぎても大きく、距離感を調整するのが難しかった」と話した。映画は、2014年から5年間、韓国とフランスを行き来しながら作った。いつの間にか、父親がフランスで水滴作品を構想した40代になった息子は、長い間の疑問を解いたのだろうか。

「そうですね。ただ、このように話すことはできますね。口数は少ないが、そばにいさえすれば愛を感じさせてくれた人。深刻だったが、ワインを一杯飲むと歌を歌っていた人。歳月が流れると、今は少し父が分かる気がします」


キム・テオン記者 beborn@donga.com