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チンパンジーの時間

Posted May. 05, 2022 08:47,   

Updated May. 05, 2022 08:47

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チンパンジーが国会議事堂に居並ぶこの絵。英国を代表するグラフティー画家バンクシーの代表作の一つだ。長さが4メートルの巨大な油絵で、2019年の競売では約150億ウォンで落札され、話題になった作品だ。バンクシーはどうして、わざわざチンパンジーを描いたのか。この絵はどうしてそれほどまでに高い価値が認められたのか。

英国を拠点に活動するバンクシーは、社会諷刺的な街頭の落書きで世界的な名声を得た。この絵が描かれた時、世界金融危機と欧州連合(EU)の財政危機の中、ユーロゾーン経済の不確実性と難民問題で英国人の危機感が高まっていた。そのうえ、英国はEU統合の際に国民投票をせず、民主的な手続きの欠如に対する国民の不満がたまっていた。

絵には、英下院議事堂を占領したチンパンジー100頭が登場する。熱気を帯びた討論ではなく怒号と狂気に包まれ、議長席のチンパンジーは準備した文書を広げることもできずにただ立ち尽くしている。議員席に座った数頭のチンパンジーは、議長席に向かって声を荒げている。約40年間、アフリカでチンパンジーを研究したジェーン・グドール氏によると、チンパンジーは人間に最も似た動物だ。道具を使い、同族を殺害する暗い本性も持っている。グドール氏の言葉通り、「チンパンジーは私たちが考えているよりもはるかに人間に似ている」。

この絵が競売に出されたのは2019年10月3日。16年の国民投票で英国のEU離脱(ブレグジット)が決定したが、英議会は何の決定も下さず、離脱を数年間延長し、政治的計算だけをした。当時の政治状況に対する辛らつな風刺をこめたこの絵が、ブレグジット予定日を控えて競売に出されると、大きな反響を得て、バンクシー作品で最高額を更新した。

この絵の題は「質問時間」。「芸術は不安な者を安らかにし、安らかな者を不安にしなければならない」と信じたバンクシーは尋ねかけているようだ。議事堂を占領したチンパンジーを見て、最も不安に思う人は果たして誰なのかと。