愛は動詞だ

３週間にわたるハンストを終えた男は、大きなダンボール紙を持って立っていた。そこにはこう書かれていた。「愛は名詞ではなく動詞だ。それは行動する言葉だ。助けてくださったすべての方に感謝します」。前の２つの文は、彼が好きなトリップ・ホップ・バンド「マッシヴ・アタック」の「Teardrop」に出てくる歌詞で、彼がなぜそのような行動をするのか縮約的に表現した言葉だった。

リチャード・ラトクリフという平凡な英国人の話だ。彼の試練は２０１６年４月に始まった。幼い娘を連れて実家の両親に会いにイランに行った妻が帰国の際、テヘラン空港で体制転覆の容疑で逮捕された。英国にいた夫は動転した。英政府は解決するから大騒ぎしないようにと言った。しかし彼はじっとしていられなかった。区議会議員を訪ね、メディアにも呼びかけ、できることは全てした。妻とともに２週間にわたってハンストまでした。妻はテヘランの監獄で、彼はロンドンのイラン大使館の前で。それも通じないと、彼は２０２１年に英外務省の建物の前で３週間のハンストを行った。妻のことを忘れないでほしいという切実な叫びだった。人々の関心から遠ざかれば、妻は永遠に帰って来ることができないかもしれなかった。

彼の妻は人質だった。イランは１９７９年にパーレビ政権が英国の銀行に預けた４億ポンド（約６４００億ウォン）を英国が返さないため、彼の妻を人質に取ったのだ。彼は命がけで行動し、その実状を世に伝えた。それが市民を動かし、政治家を動かした。政府は世論に押されてイランに金を返し、彼の妻は２０２２年３月、家族のもとに戻った。６年が経過していた。彼の涙ぐましい努力のおかげだった。彼を助けた区議会の女性議員は議会で解放のニュースを伝え、彼は「世の夫に対する基準を引き上げた」と話した。そうだ。彼はマッシヴ・アタックの歌詞のように愛が実践的な動詞であることを示した。定型化した名詞ではなく。