不倫の現場を夫にばれた直後、羞恥心のために主婦が漢江(ハンガン)に身を投げ、自ら命を絶った場合、遺族に対し死亡保険金を支払うべきか。自殺の場合は保険金が降りないのが常識となっているが、同事件では異なる判決が出た。裁判所が、夫に不倫がばれた主婦の心理状態を、「心神喪失」と認めたからだ。
ソウルに住む40代の主婦・A氏(当時42歳)は11年11月、2年前から付き合ってきた陸軍代将のB氏と、焼酎3本やウイスキー1本を飲んだ後、代行運転手を呼んで、一緒に車に乗り、自宅に向かった。
妻が夜遅くまで帰ってこなかったため、A氏の夫は駐車場で妻を待った。A氏はそれには気づかず、駐車場に車をつけ、車の中でB氏と不倫行為をした。A氏の車を見つけた夫は、車のドアを開けた。夫は二人の不倫の場面をありのまま目撃した。憤った夫は、B氏と喧嘩を始めた。A氏は二人を引きとめて落ち着かせた後、夫に対し、「家に入ってて。すぐ帰るから」と話した。そして、周辺の漢江の川辺に向かって、身を投げて自殺した。
妻が死亡すると、夫は保険会社を相手に、「死亡保険金2億5000万ウォンを支給せよ」と訴訟を起こした。すると保険会社側は、「自殺などの故意により、自分を害した場合、保険金を支払わない」という約款条項を基に断った。
ソウル中央地裁・民事合議25部(趙胤新部長判事)は、「商法では自殺の場合、保険金を支払わなくて済むと定めているが、保険会社の約款に心神喪失、精神疾患などにより、自ら意思決定のできない場合は、自殺でも保険金を支払うことができるという例外条項がある」とし、夫に2億5000万ウォンを支給すべきだと判決した。さらに、「家庭や職場でなんら問題の無かったA氏の普段の状況から見て、不倫現場のばれたA氏が極度の羞恥心や興奮のため、きちんと意思決定をすることができない状態で、偶発的に自殺したものと見られる」と説明した。A氏の場合、精神状態が崩壊した状況下で極端な選択をしており、例外条項に当たると判断したのだ。
裁判所は、自殺者の遺族に対して保険金を支払う問題をめぐり、事案別に異なる判断を下してきた。03年、夫婦喧嘩の途中、ベランダの窓から飛び降りて死亡した主婦のC氏に対しては、保険金が支給された。C氏は、借金保証問題をめぐり、夫と喧嘩していたところ、何度も頬を打たれており、夫から「一緒に死のう」といわれながらベランダに押し付けられると、いきなり飛び降りて死亡した。
当時、裁判所は、「きわめて興奮した状態で過激に喧嘩していたところ、C氏が自殺したのは、極度の興奮や心理不安に勝つことができず、心身微弱の状態で起きた出来事と判断される」として、遺族に対し、保険金1億5000万ウォンを支給するよう判決した。
一方、夫の失業でうつ病などに苦しみ、04年、マンションの非常階段の窓から飛び降りて死亡したD氏に対し、裁判所は、「夫の失業のために経済的な困難を経験し、精神科の治療を受けたのは事実だが、それだけで心身喪失の状態だったとは判断し難い」として、原告敗訴の判決を下した。
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