安哲秀(アン・チョルス)氏が10日、「次期政府ではいかなる任命職にも就かない」と明らかにした。
安氏は同日、全州(チョンジュ)室内体育館の前で、民主統合党(民主党)の文在寅(ムン・ジェイン)候補の応援遊説をし、「新しい政治は、政治改革と経済改革が必須だ。政治改革は既得権を手放すことが不可欠だ」として、このように話した。
安氏の発言は、これまで強調してきた新しい政治に対する意志を再度確認したものとみられる。何よりも、文候補が政権を獲得しても見返りを求めないことを明確にし、まず既得権放棄を実践する新しい政治への本気度を示そうとしたということだ。柳敏永(ユ・ミンヨン)報道担当は、「白衣従軍の延長線上にある発言だ」とし、「内閣に参加しないということと、白衣従軍するという考えに変化がないという意味だ」と発言の背景を説明した。
安氏の発言は、セヌリ党の朴槿恵(パク・クンヘ)候補側が文・安連帯に対して、「権力の分け合い」「旧態政治」などと攻撃していることから、論争の芽を断ち切る狙いもあるようだ。文候補は国民連帯の枠組みをもとに、既存の民主党に安氏に代表される中道派、合理的保守派まで包括する挙国内閣を構想すると公約した。また、責任首相制の実現を公約に掲げたため、当選した場合「文統安首(文在寅大統領—安哲秀首相)」体制が有力という見方も多かった。このような観測に安氏が釘を刺したのだ。また、親盧(盧武鉉元大統領系)の人々に対して、政権獲得後の任命職放棄宣言を迫るカードにもなり得る。
しかし、安氏の発言が文候補の「共同政府」「挙国内閣」の公約直後に出たという点で微妙な波紋を呼んでいる。見方によっては、文候補の提案を安氏が断ったと見ることもできるためだ。安氏の発言が、野党支持層の結集に肯定的な影響だけを及ぼすわけではないと分析される理由だ。民主党だけでなく、安氏の支持勢力、進歩正義党、野党寄りの市民団体、中道保守派の人々をすべて取り込むと予告した「文在寅版大統合内閣」に安氏が含まれない場合、支持層の投票心理にも影響を及ぼすことは避けられないことも事実だ。
この発言が、安氏中心の新党結成を含む独自勢力の構築を念頭に置いた布石であるという見方もある。任命職に就かず、「選出職(選挙によって選出される職)」に挑戦するという意味ということだ。文候補が前日、「(政権獲得後)新たに編成する」、「国民政党に進む」として新党結成の可能性に言及したこととかみ合えば、政界再編の可能性につながる可能もある。
安氏には、大統領選後、新党結成による独自勢力の構築の道が開かれている。再補欠選挙や政界再編による勢力結集が、安氏が構想する新しい政治のカラーを明確にするうえで有利になり得る。また、選出職の進出は、一本化の過程で安氏の弱点とされた政治経験不足の克服にも良い機会になる。
しかし、政界で上がっている「文在寅—安哲秀」国民政党論のシナリオは、民主党の枠組みを完全に壊すことから出発しなければならないという点で、警戒の声も出ている。文候補側の李穆熙(イ・モクヒ)企画本部長は同日、あるラジオ番組で、大統領選挙後の政界再編について、「新党と言えば、しばしば分党を考えるトラウマのようなものがある」とし、「民主党を分けたりするのではなく、民主党がさらに豊かに大きくなり、刷新する姿になるだろう」と述べた。
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