韓相大(ハン・サンデ)検察総長は29日夕方、公用車で警護員を帰宅させ、本人は執務室に残った。韓総長は30日未明まで執務室で、これまで構想してきた検察改革案の内容をまとめていた。韓総長は29日午後までは、「無条件辞任」を求める検事の集団的要求を気にもとめず、30日午後2時に改革案を発表すると公言したが、30日午前に突然撤回し、午前10時に辞任した。
韓総長が、正確にいつ考えを変えたのかは明確でない。ただ、29日の深夜から30日の早朝までの間に、検察内部の葛藤の拡散を憂慮した大統領府と法務部の空気を読み取って無条件の辞任を決心したという。
大統領府の関係者は、「大統領選挙を控えて、検察で起こったことに総長が責任を取るほかに代案があるだろうか。韓総長もあうんの呼吸で大統領府の考えを理解したのだろう」と話した。別の関係者は、「韓総長が、権在珍(クォン・ジェジン)法務部長官から大統領府の考えを聞いた可能性がある」と指摘した。大統領府から再び信任を受ける可能性がほとんどない状況下で、改革案を発表したところで推進主体がない力の抜けた改革案になるため、そのまま退くのが賢明な道だと判断したとみられる。
同日午前8時、取材陣のカメラを避けることなく庁舎の正門から出勤した韓総長は、肩の荷が下りたかのように明るい表情だった。記者会見の前に最高検察庁の幹部らと会って、「1週間前に退くべきだったが、なぜ今になったのか分からない。中央捜査部に申し訳ない」と話したという。ある最高検察庁関係者は、「韓総長に笑顔が戻った。合理的だった普段の姿だった」と伝えた。
結果的に韓総長が改革案を発表せずに辞任することになったのは、自ら今回の事態を招いたためだといえる。検察改革案に中央捜査部を廃止する内容を含めなければならないと確信する韓総長が、反対勢力の頂点にいた崔在卿(チェ・ジェギョン)中央捜査部長を揺さぶるために公開監察を指示し、これが逆風になって韓総長が描いた構図を壊す結果となった。
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