米国人にとって最も恐ろしい政府機関は、連邦捜査局(FBI)や検察ではなく、国税庁(IRS)だ。「ミスタークリーン」と呼ばれた検察総長出身のエリオット・スピッツァー・ニューヨーク州知事を、08年、売春問題で辞任に追い込んだのもIRSだった。金融機関の不審な資金取引を追跡していたIRSに、スピッツァー州知事が摘発された。花代を払おうと、現金を下ろして使ったのが問題だった。IRSは、バンコデルタアジア(BDA)銀行を通じ、北朝鮮の不法資金取引も見つけ出し、口座を凍結させた。
◆IRSの鋭いレーダーは、ハリウッドの俳優も避けては通れない。「ブレード」シリーズのウェズリ・スナイプスが出演する映画は当面、見ることができない。スナイプスは1999年から2001年にかけて、所得3億8000万ドルに対する税金をおさめず、フロリダ裁判所から3年刑の判決を受け、服役している。ニコラス・ケイジも、自分の映画制作会社を通じ、個人経費を処理し、IRSから税金や罰金を課せられた。ハリウッドの脱税俳優2人とも、生憎も妻が韓国人出身だ。
◆芸能番組の司会者として最高の人気を享受している芸能人、姜鎬童(カン・ホドン)氏と、有名女優の金亞中(キム・アジュン)氏が国税庁から、所得税漏れの指摘を受け、数億ウォンの追徴金を課せられた。姜氏の追徴金は数億ウォン台、金氏は6億ウォン台に上る。追徴金額から見て、彼らの実際の収入は相当なレベルに達するものと見られる。彼らの所属事務所は、「追徴税金は誠実に納める」と低姿勢を見せながらも、故意ではないと主張している。「見逃されたら節税、捕まえてしまったら脱税」という、便法的な税務処理が明らかになったという見方もある。
◆「一人企業」という芸能人の特性上、どこまでを必要経費に認めるべきか、曖昧な点はある。しかし、芸能人は大衆の人気を糧にする職業だ。若者に及ぼす影響力が大きいことでは、公人中の公人とも言える。1回の出演料が1000万ウォンを上回る芸能人が、税金すらしっかり納めなかったなら、ファンらが感じる失望感は大変なものになるだろう。税金のみ誠実に納めることから一歩進んで、社会の貧しい隣人のために何ができるについても、関心を持ってもらいたい。ロックバンド、U2のリードシンガー、ボノは、アフリカの貧困や疾病退治に向け、力を入れたことが認められ、3度もノーベル平和賞候補に名を連ねた。
鄭星姫(チョン・ソンヒ)論説委員 shchung@donga.com






