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北朝鮮収容所に残された呉吉男氏の妻娘、出身地統営で救出呼びかける展示会

北朝鮮収容所に残された呉吉男氏の妻娘、出身地統営で救出呼びかける展示会

Posted August. 03, 2011 03:13,   

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「北朝鮮で死ぬことはできません。一度でも故郷の地を踏まなければ死んでも死にきれないでしょう」

先月28日、慶尚南道統営市西湖洞(トンヨンシ・ソホドン)の統営旅客船ターミナル内の待合室。展示会「統営の娘、申淑子(シン・スクチャ)さん親子の救出署名運動・北朝鮮人権を正しく知る」の会場で会った申さんの小・中学校の同窓生4人は、「生きていることを祈るだけだ」と話した。申淑子さん(69)は、慶尚南道統営で生まれ、統営小学校(45期)、統営女子中学校(9期)を卒業した「統営の娘」だが、数奇な運命で北朝鮮に渡った。現在は生死を知る術もない。

同日の展示会は、民主平和統一諮問会議統営協議会と、申さんの救出運動に火をつけた統営現代教会のパン・スヨル牧師(49)と教会信者が主催した。

中学2年の時に親友だったという金スンジャさん(68)は、「おとなしく勉強ができたスクチャが北朝鮮にいるという話を聞いて、眠ることもできなかった。万一死んでいるのなら、2人の娘だけでも返してほしい」と涙声で話した。金さんは、えくぼと目の下に小さなほくろがあってかわいかった友人が70歳を目前にして北朝鮮に、それも政治犯収容所にいるという事実が信じられなかった。小・中学校をともに通った李ソンジャ(68)、チュ・キルチャ(69)、チュ・ドクキさん(67)は、「記憶はおぼろげだが、背が低く、しっかりした友人だった」と、ポスターの友人の顔を撫でた。

申さんは、中学校の卒業と同時に、1958年に馬山(マサン)看護学校に進学し、統営の友人と離れた。1960年代後半、看護師派遣政策によってドイツに渡った。そこで経済学を学んでいた呉吉男(オ・ギルナム)博士(69)と出会い、1975年に結婚した。へウォン(35)とキュウォン(33)の2人の娘がいる。仲むつまじい家庭は、1985年、夫のオさんがだまされたことで崩壊した。北朝鮮に行けば教授の職と当時交通事故でケガをした申さんに最良の治療を保障すると言って、北朝鮮要員が近づいてきた。さらに統営出身の音楽家、尹伊桑(ユン・イサン)氏と在独学者の宋斗律(ソン・ドゥユル)氏らの積極的な誘いが後押しした。申さんは「北朝鮮は信じられない」と反対した。しかし夫の考えが変わらず、その年北朝鮮に渡った。

彼らは外部と遮断され、3ヵ月間、洗脳教育を受けた。その後、呉博士は対南中傷宣伝放送の「救国の声」の放送要員として配置された。1年が過ぎた時、上部から呉博士に「ドイツに留学している韓国人夫婦を連れてこい」という指令が下った。申さんは夫に、「自分の誤った判断で代価を払うことは仕方がないが、別の犠牲者を作れという指令には協力しないで、逃げて。娘たちが卑劣な犯罪共謀者の娘になるようなことはあってはいけない。脱出に成功すれば私たちを救出し、それができない場合は、私たちが死ぬと思って」と言った。呉博士は脱出に成功した。しかし、家族を救うことはできなかった。それどころか、申さんと2人の娘は1987年末、政治犯収容所「燿徳(ヨドク)収容所」に収監された。

脱出後、ドイツに隠れていたオさんは、当時北朝鮮と親密な関係にあった尹伊桑氏に会って、北朝鮮にいる家族の送還を数回要請した。尹氏は、1987年と1988年の2度、家族に手紙を託した。1991年には、夫人と娘の肉声が録音されたテープと家族の写真6枚を渡した。そして、尹氏はオさんに、「恩恵を施した金日成(キム・イルソン)主席を裏切ったので家族を人質にするほかない。再び北朝鮮に入国して、忠誠を誓え」と強要した。

しかし、オさんは1992年にドイツ駐在韓国大使館に自首し、帰国した。韓国で、関連機関に要請文を送ったが、反応は期待に及ばなかった。

そうして約20年が過ぎた今、忘れられていた申さんの話は、パン牧師の夫人ソ・シンヒャンさん(47)によって日の目を見ることになった。ソさんは2009年、救国祈祷会(エステル祈祷運動)で、北朝鮮の政治犯収容所に関する講演で申さんのことを知った。ちょうど北朝鮮人権団体が主管する「そこには愛がない。北朝鮮政治犯収容所展示会」を統営で開くのはどうかという提案を受け、承諾した。展示会の本来のスローガンに「統営の娘があそこにいます」という言葉を入れ、5、6月に展示会を開き、申さん親子の救出運動に火をつけた。先月26日には、慶尚南道昌原(チャンウォン)で慶尚南道フォーラム21と共に関連の講演会を行った。

現在、統営を中心に慶尚南道一円で申さん親子救出署名運動が広がっている。パン牧師は、年中無休でこの運動を展開する計画だ。現在まで署名が2万6000人。統営では、全体の人口(14万人)の11.4%である1万6000人が署名した。パン牧師は、「申淑子さん親子の生死確認要請および救出嘆願書」を潘基文(パン・ギムン)国連事務総長と統一部に送り、協力を要請する計画だ。パン牧師は、「北朝鮮には人権蹂躪のレベルではなく、集団虐殺が起きているにもかかわらず、不正を見て憤然と立ち上がっていた韓国の若者たちは沈黙している」とし、「申淑子さん親子の救出運動にすべての人が参加することを願う」と話した。



silent@donga.com