●体罰反対の全教組教師も「腹立つばかり」
先月15日午後12時半ごろ、全羅南道順川市(チョルラナムド・スンチョンシ)A中学校の1年12組の教室。B教師(55、女)が授業を受けていた生徒Cさん(13)に近づいた。B教師が、「何を書いているの?」とCさんのノートを取り上げようとすると、Cさんはそれを止めた。B教師は、Cさんの頭の後ろを手で打った。Cさんは、「教師が生徒を殴ってもいいですか。授業のほうこそしっかりしてよ」と、机を蹴飛ばし、外に出た。B教師は、Cさんの首をつかんで座らせ、髪の毛をつかんだ。CさんもB教師の髪の毛をわしづかみにした。
順川A中学校の学校運営委員らは、「この揉め事」の後、2度も教師や保護者などが参加する共同会議を開いた。保護者運営委員や校長は、「Cさんは物心がついてないだけに、社会でボランティア活動をさせるべきだ」として軽い処罰を、教師らは、「転校させるべきだ」と重罰をそれぞれ主張した。Cさんの父親(43)は、「娘が先生の髪の毛をつかむなんて、本当に間違っている」と言い、「どうか、転校だけは許してほしい」と訴えた。
学校運営委員会が3週間以上、解決策を見出そうと努めたものの、教権や生徒の人権を眺める見方の違いは余りにも大きかった。学校のシン某運営委員長(43)は、「生徒の人権と教権が対立する状況の中、教員団体所属の教師や一部の保護者らは、Cさんを転校させるべきだと頑なに主張し、仲裁に失敗した」と伝えた。
その後、Cさんの父親は、A中学の校長や教頭、教師など7人を、名誉毀損などの容疑で告訴した。彼は、「娘が過ちを犯したのは明白なことだが、B教師はもちろん、娘を踏みにじると叫んでいだほかの教師など、強硬な処罰を求める多くの教師は全国教職員労働組合(全教組)所属だ」と主張した。また、その揉め事以来、娘を巡り口にすることすらできないほどのひどいうわさが広まり、保護者団体を通じて全教組に助けを求めたが、何ら回答を受けていない」と付け加えた。
全教組・全南支部の関係者は、「正式な要請は受けていない」と言い、「Cさんは今回のトラブルのほか、他の問題で何度もトラブルを起こしていると聞いているだけに、該当学校のほうでうまく処理すべきだというのが、公式立場だ」と語った。
●「子供らが怖い」
先月26日、京畿城南市(キョンギ・ソンナムシ)のD中学校に、警察官ら駆けつけた。一人の生徒が「大暴れ」しているという110番通報が寄せられたためだ。同校の3年生の男子生徒が、廊下の大型額縁を壊すなど、乱暴や暴言をふるい続けると、やめさせようとしたができなかった教師らが、警察に助けを求めたのだ。学校の関係者は、「警察を呼んだのは正しいことではないが、体罰もできない現状では、やむをえなかった」とため息をついた。
京畿道教員団体総連合会(京畿教総)には、条例公布後、「生活指導が余りにもきつい」という教師らの電話が1日10件前後も寄せられている。訓戒のため、軽くげんこつで小突こうとすると、「体罰禁止なのに、なぜ打つのか」とたて突く生徒のため、どきりとしたという教師、タバコを吸っていたところを摘発され、体罰を受けていた生徒が、「警察に通報する」と居直り、戸惑ったという教師もいる。京畿教総の関係者は、「多くの教師が外部に知らせず、見知らぬふりをするケースが多く、実例はさらい多いだろう」と話した。
教師らの体や心は急速に萎縮している。城南市E中学校のK某教師は、「反省文もだめだし、体罰はさらにだめな現状では、生徒への指導方法はほとんどない」と言い、「生徒らにたて突かれた時の心の傷のため、生徒が怖いという教師らもいる」と伝えた。36年間、教壇に立っているある中学校校長は、「何ら代案もなく、いきなり体罰を禁止したことで、大半の教師の真心のこもった訓育までなくなった」と指摘した。
京畿道教育庁は、現場の状況が深刻だという判断を受け、当初12月末と予定されていた体罰代替プログラムの決定や普及を繰り上げることにした。京畿道教育庁の関係者は、「現在、教師らが一番早急に願っているのは体罰禁止の代案だ」と主張し、「早ければ来週中にも、決定された代案から直ちに、現場に普及する方針だ」と語った。