金英春(キム・ヨンチュン)北朝鮮人民武力部長は22日、韓国側に通知文を送り、「(南側は北側の)国防委員会検査団を無条件に受け入れ、世界に向けて真実を明らかにしなければならない」と要求したと、朝鮮中央通信が報じた。金部長は、「韓国側の言葉通り、調査結果が客観的かつ科学的ならば、韓国の検査団を受け入れることができない理由はない」としてこのように話した。
金部長は、韓国側が海軍哨戒艦「天安(チョンアン)」沈没事件の調査結果を国連軍司令部の軍事停戦委員会を通じて北朝鮮側に通知するという方針については、「今回の事件は、当初から南側によって北南間の問題として捏造されたため、軍事停戦委員会という幽霊機構を引き込む下等の名分もないというのが、私たちの立場だ」と言って拒否した。
北朝鮮軍部内の最高実力者に挙げられる金部長が実名で対南通知文を発送したのは、異例のこと。北朝鮮が、金部長を前面に押し出して、韓国側が拒否した「検査団受け入れ」を再度要求したことは、「私たちは潔白だ」というメッセージを外部に伝えるための宣伝戦とみえる。ある政府関係者は、「北朝鮮が、天安艦魚雷攻撃が真実かどうかに対する韓国内の世論の分裂を煽り、事件を『真相究明』局面に縛っておくという考えだ」と分析した。
天安艦沈没の明白な証拠が出たことによって、当惑感と韓国と国際社会の報復に対する恐れも敷かれていると観測される。別の関係者は、「北朝鮮の国防委が20日、報道官声明を通じて、検査団の派遣を提案したのは、韓国政府が『決定的な証拠』を確保したことを一足遅れて把握し、急に用意した対応措置とみえる。韓国側の拒否にもかかわらず、検査団の派遣を繰り返し要求するのは、制裁を避けようという必死の努力」と分析した。ある専門家は、「挑発が明らかになると、対話でもみ消そうとする旧態依然な『出口戦略』ではないか」と話した。
北朝鮮の差し迫っているのは、自分たちが破棄宣言した南北基本合意書を検査団派遣の名分に持ち出す自己矛盾でも現われている。金部長は、「不可侵に関する南北基本合意書の第2章10条と付属合意書の第2章8条の要求に照らしてみても、韓国側は、韓国の国防委員会の検査団を受け入れる措置を取らなければならないだろう」と主張した。
しかし、北朝鮮は昨年1月30日、労働党傘下の対南機構である祖国平和統一委員会(祖平統)名義で、基本合意書2枚など、「南北の政治・軍事的対決状態の解消に向けたすべての当局間合意」を無効にすると宣言した。
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