
バンクーバー冬季五輪で、連日金メダルのニュースを届けてくれる韓国のスピードスケート。今大会で急に技量が爆発的に高まった原因は何だろうか。ここにはバンクーバーという地理的な特性による空気力学の秘密、先進国型に変わっている支援システムが一役買った。今大会、韓国スピードスケートの力走を科学的な側面から迫った。
●空気力学の秘密
最高時速60キロの速いスピードで疾走するスピードスケートの短距離種目では、空気抵抗が競技に大きく影響するが、空気抵抗に大きな変数として働くバンクーバーの低い高度、ライバルより小さい韓国選手の体格が有利に働いた。
特に、17日、世界ランキング1、2位のドイツのジェニー・ウォルフと中国の王北星を抜き、金メダルを獲得した李相花(イ・サンファ、21、韓国体育大)の場合、体格が一番小さい。李相花は163センチ58キロ、ウォルフは172センチ72キロ、王北星は172センチ64キロ。
バンクーバーは、海抜約4メートルでほとんど海水面の高さだ。専門家が今回の五輪氷上種目で新記録を期待しない理由は、バンクーバーの低い高度のためだ。現在、スピードスケート短距離の最高記録は、ほとんど米国のソルトレイクシティーで作られたものだ。ソルトレイクシティーは海抜1288メートル。
空気の密度は高度によって異なってくるが、高度が305メートル高くなるたびに、空気密度は3%ずつ低くなる。したがって、高度が1220メートルのところより、高度が0メートルのところは空気密度が12%も低い。
また、空気抵抗は空気密度・空気と接触する面積に比例し、物体の速度の二乗に比例する。スピードスケート選手らが滑る際、腰をかがめる姿勢を維持するのは、空気抵抗を減らすためだ。サイクル選手が姿勢を最大限低め、自転車に乗ることと同じ理由だ。
これをバンクーバーに適用すると、選手らはソルトレイクシティーで競技する時より、約12%さらに大きい空気抵抗の中で滑らなければならない。その際、面積が重要な変数であるだけに、小柄な李相花が有利だ。反面、空気抵抗が小さいところでは、体格の差が相対的に大きな変数にならない。
実際、五輪を控えた昨年12月、ソルトレイクシティーで行われたワールドカップ5次大会の時、1位をマークしたウォルフの記録は37秒00、王北星が37秒14で2位、李相花が37秒24で3位だった。
今回の五輪では1回目を基準に、李相花が38秒24、ウォルフが38秒30、王北星が38秒48だった。ウォルフがソルトレイクシティーの記録より、1秒30も遅い記録が出た反面、李相花は1秒しか差が出なかった。結局、0.3秒差がメダルの色を変えたことになる。
韓国航空大学航空機械工学科のソン・ヨンギュ教授は、「技量の差がほとんどないという前提で、空気抵抗の大きい環境では、小柄な選手が有利で当然だ」と話した。
また、体育科学研究院のソン・ボンジュ博士は、「小柄な選手は重心が低く、力が発現される時も、動作が小さく速く前へ進める」と話した。
●先進国型支援システム
氷上は先進国型スポーツに属する。一昔前の「ハングリー精神」や「不屈の闘士」だけでは、良い成績が出せない種目だ。大々的な資本投資や先端のスポーツ科学の下支えがあってこそ、発展できる種目というわけだ。
体育科学研究院・政策開発室のイ・ヨンシク室長は、「1988年、ソウル五輪以降、先進国型スポーツのインフラが整えられ始め、その後、20年以上の年月が経ち、成果が現れているわけだ」と話した。
大韓氷上競技連盟は、数年前に「バンクーバープロジェクト」を樹立し、10年冬季五輪を控え、氷上3大種目でメダル獲得を目標に据え、国内の氷上大会の活性化に取り組む一方、海外で開かれる国際大会に選手らを積極的に派遣するなど、有望株の掘り出しや育成に尽力してきた。
連盟の朴ソンイン会長は、「三星(サムスン)が連盟を受け持ち、13年間継続的に支援してきたのが実を結んでいる。連盟は最近、毎年約30回の海外競技や現地トレーニングを支援してきた」と話した。
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