昨年12月初頭、アップルの携帯電話「iPhone」を購入した広告会社役員である金ジョンレ氏の日常は、iPhoneを使ってから1ヵ月で大きく変わった。
業務の特性上、国内外のニュースを多く見なければならない金氏は、iPhoneのおかげで、オフィスで新聞を読む時間が減った。iPhoneで大概のニュースを見ることができ、通勤中の余っている時間を活用することが可能になったためだ。
文化や消費のパターンにも変化が生じている。帰宅の途中、iPhone向けコンテンツを販売しているアイチューンズ・アップストアからダウンロードした音楽を聴いたり、iPhoneでユーチューブにアクセスし、動画を鑑賞することもできる。最近は、世界のテレビをリアルタイムで見られるtvUというソフトを、アップストアからダウンロードし、各国のテレビ放送を比較しながら、見る楽しみもできた。金氏は、「音楽や動画を見るためには、MP3プレーヤーや携帯向けマルチメディアプレーヤー(PMP)を別途に携えなければならず、面倒だったが、今は携帯電話一つで全てが解決され、かつてより、より多く見たり聞いたりしている」と話した。
20万台販売されたiPhoneを皮切りに、スマートフォン市場が拡大され、文化コンテンツの消費に変化が起きている。金氏のように時間や場所に拘らず、無線インターネットを活用し、本や音楽、映像を楽しむ消費者が増えている。消費パターンの変化は、生産や流通方式にも影響を及ぼし、いち早く取り組む企業が増えている。
出版流通会社「ブックセン」は、スマートフォンで電子ブックが読めるモビブックサイトを、5日オープンした。文芸出版社は昨年12月初め、世界文学全集のセットをiPhone専用の電子ブック書店「リティブックス」で、販売している。音楽提供会社の「バダソリ」は昨年12月22日、iPhoneで音楽をダウンロードできるiPhone向けソフトをアップストアに掲載し、1日に数千件のダウンロードを記録した。ネオウィズバックスは、iPhone専用の映画ダウンロードサービスを行っており、人気を集めている。
このように、文化の生産や消費パラダイムが変わる中、iPhoneを作っているアップル社が、世界の文化市場に直接及ぼす影響力も増大するものとみられる。米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は最近、「アップルは、アイチューンズを総合メディアフラットフォームに転換し、インターネットテレビのサービスを実施するだろう」と報じた。1億人に上るアイチューンズの加入者を背景に、市場の勢力図に少なからぬ変化をもたらす見込みだ。
「モバイル革命が作り出すビジネスを巡る未来図」を最近、発売した金ジュンテ・IT文化院院長は、「スマートフォンによる文化コンテンツ市場を巡る戦いは、今年から本格化するだろう」と語った。まず、電子ブックを巡る市場が増大し、携帯電話専用の小説を書く作家群が誕生するだろうと予測した。金氏は、「インターネット小説に比べ、反応が早いので、リアルタイムでの交感を基に、小説の連載スピードが速まり、作家も増えるだろう」と話した。
音楽分野でも同様の様相が見込まれる。金院長は、「米国ではレコード会社を通さず、アイチューンズに直接曲を掲載し、デビューする歌手が増えている」とし、「多くのコンテンツが創作者から消費者に直接伝わるオープンマーケットが活性化されることになり、コンテンツを巡る流通構造にも変化が起きるだろう」と見込んだ。
関連業界は、変化がどのようなスピードや様相で行われるか見守っている。iPhoneが発売されると、即座に購入した出版社代表の朴某氏は、「iPhone賛美論者」であるが、一方では悩みもあると話している。朴氏は、「代表的なアナログ媒体である出版社各社が、スマートフォンのユーザーらのデジタル的感性にあわすことができなければ、出版とは全く関係のない人々に、市場を明け渡し、淘汰されることもありうる」とし、「新たなレベルの戦場が開かれている現在、このようなことから危機であると同時に機会でもあり、機会でありながら危機でもある」と語った。
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