「あのメニューのせいで私は一ヶ月も苦労させられたよ」
牛肉原産地表示制の全面的な実施を明日に控えた7日、ソウル西大門区新村(ソデムング・シンチョン)でW焼肉店を経営するチェ・ジェヒ氏(52)は、店の壁に新たに貼り付けたメニューを見ながらため息をついた。
チェ氏は80万ウォンをかけて、店内の7つの品書きを取り換えた。
チェ氏は、「政府からは牛肉の原産地を表示するように言われただけで、どのように表示すればよいか、そのやり方までの指示がなく、『国内産』『豪州産』とだけ書いておいた」とし、「ところが先日、新聞に韓国牛かどうか、肉牛かどうかまで表示しなければならないと書かれていたので、また2回も作り直さざるを得なかった」と語った。
また、「米国産牛肉の輸入が本格化し、輸入先が変われば、再びメニューを取り換えなければならない。政府にはきちんとした指針すらなく、原産地を表示しなければ数千万ウォンの罰金を科すと脅かして、商人たちに責任を転嫁しているようだ」と不満をもらした。
8日から実施される新農産物品質管理法によれば、牛肉の原産地を故意に偽って表示した場合、3年以下の懲役または3000万ウォン以下の罰金刑を科せられることになる。
●メニューの表記方式が分からず困惑
一部の飲食店では同日まで、表記方式が分からず困惑していた。
焼き物や煮物、冷麺など、一部の材料として牛肉を使う場合、原産地表記が難しいためだ。
ソウル鐘路区貫鐵洞(チョンノグ・グァンチョルドン)のK海苔巻き屋の経営者、パク某氏(42)は、「小さなメニューに原産地を一つ一つ表示することも面倒であり、食肉店から肉を購入しているので原産地自体が分からない」とした上で、「牛肉海苔巻」そのものをメニューから削除した。
店ごとのメニューの取替え方もまちまちだった。
数十万ウォンをかけてメニューのコーティング作業を新たにした店がある一方、メニューの上に油性ペンで原産地のみを書き入れたところもある。
ソウル麻浦区(マポグ)のある焼肉店のオーナーは、「『消費者が分かりやすいように表示せよ』とのみ書かれた公文が、送り先すら書かれずに舞い込んできた」とした上で、「A4の紙に原産地を表示して掲げてはいるが、これでいいのかどうか分からない」と話した。
これについて農林水産食品部の関係者は、「名誉監視員を通じて飲食店ごとに冊子を配布してはいるものの、公文発送による原産地表示の方式についての具体的な説明はなされていないのが現状だ」として、広報不足を認めた。
●取締りの有効性には疑問
飲食店の経営者たちは、原産地表示制で牛肉の安全性が改善し、消費が増える可能性は少ないと口をそろえた。
牛肉の供給を受ける際、会社から屠畜検査証明書や輸入済み証明書などの原産地関連の資料を受け取っているが、飲食店の経営者や料理人が虚偽の如何を確認するのは不可能なためだ。
ソウル鐘路区武橋洞(ムギョドン)のある焼肉屋の料理人の李某氏は、「ベテランの料理人でも肉だけを見て原産地を見抜くことはできない」とし、「取締りの公務員の人数も少ないだろうし、たとえ、取り締まりに来ても表示された原産地を正確に識別できるかどうかははなはだ疑問だ」と話した。
李氏は、「牛肉の原産地を徹底的に判別すると言われているが、牛肉を使った調味料までは取り締まれないだろう」とした上で、「政府が最初から検疫の過程で解決しなければならない問題を民間に転嫁しているのと同然だ」と語った。
飲食店を訪れる客たちの反応も手厳しい。
サラリーマンの金ジュンハン氏は、「韓国牛と非韓国牛を区別するのと違って、米国産とオーストラリア産は区別が難しく、原産地表示は信じられない」とした上で、「今回の狂牛病(BSE=牛海綿状脳症)騒動で、牛肉離れした人たちは、原産地を表示しても戻ってくることはないだろう」と話した。
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