権五乗(クォン・オスン)公正取引委員長は最近、「国際競争力のために、合併・買収(M&A)で企業を育てなければならないという石油化学業界の論理は非常に危険だ」と述べた。これに対して、業界だけでなく、同じ政府内の産業資源部も「現実を分かっていない」と嘆いている。
最近、サウジアラビアやイランなどの中東産油国が、国内より60%も安い原価を武器に油化製品の生産を始めたほか、中国も関連設備を急速に増やしている。生き残るには、構造調整を先送りにできないのが韓国油化業界の状況だ。
公取委は昨年にも、東洋(トンヤン)製鉄化学が、米国系のタイヤ原料製造会社CCCを買収しようとしたが、ブレーキをかけた。世界市場を狙ったM&Aだったが、世界市場の5%にすぎない韓国市場のシェアを問題視し、「CCCの韓国法人CCKは買収せず、売却せよ」と強要した。イーマートがウォルマート・コリアを買収する時も、公取委は「4つか5つの売場を売却し、市場のシェアを下げよ」と要求した。2件はいずれも行政訴訟中だ。
グローバル化で産業と競争の地形は急変した。国内の油化企業は、生産量の半分を輸出し、輸出量の半分を中国に売る。競争が全世界的な規模で進んでいる状況で、国内の市場シェアにけちをつけてばかりいては、企業が柔軟な世界戦略を展開することはできない。にもかかわらず公取委は、「国内の市場シェアの50%を超えれば、企業合併を規制する」という言葉だけを繰り返している。これは、グローバル化の概念がなかった30、40年前なら通用する論理だ。米国は、自国内の市場が大きく、独寡占規制が厳しいことで有名な国だが、1984年以来20年以上、M&A規制をしていない。
公取委の旧態を見ていると、資本市場統合法の施行によって、今後起こる金融産業間のM&Aの動きも阻止しないか心配される。金融産業の構造調整が引き延ばされる場合、ゴールドマン・サックスのような世界的な投資銀行(IB)を育てることもできず、北東アジアの金融ハーブを夢見ることもできない。公取委は、もはや世界市場の流れとは合わない。時代錯誤的なM&A規制や出資総額制限で企業の足を引っ張る考えはやめて、韓国企業に羽をつけてあげなければならない。企業が死ねば、何で暮すというのだろうか。行政も学問も時代の変化に追いつけなければ、淘汰されて当然だ。






