1993年12月5日、李經植(イ・ギョンシク)経済副首相が国会予算決算委員会に入ると、野党の平和民主党のある議員が「この売国奴、李完用(イ・ワンヨン)のようなやつ」と叫びながら飛びかかった。李副首相は売国奴という言葉があまりに悔しかったのか、その日の夕方、私的な場で「民間人の立場で会ったらそいつを殴りつける」と言った。売国奴という発言が出たのはウルグアイラウンド(UR)コメ交渉のためだった。しかし「コメ市場10年間開放猶予、10年後に再交渉」はURで最も成功した交渉と評価されている。
◆全羅南道康津(チョルラナムド・カンジン)・莞島(ワンド)出身である李泳鎬(イ・ヨンホ)ウリ議員が韓米FTAに賛成という立場を表明し、地元の農民会員から「売国奴」という言葉を浴びている。乙巳五賊(日本の侵略政策に加担した5人の政治家)を思わせる売国奴という罵倒は、相手に大きな恥を感じさせる。公職者や政治家にはなおさらのことだろう。韓国は今、インターネットと情報通信技術の進歩により「世界は平ら」という言葉が出るほどグローバル化、開放された時代の中に生きている。韓米FTAもこのような時代を生きていくための一つの手段だ。反対することもあっていいが、これを「国を売り払う」と表現するのは度を越している。
◆それが反米感情の表れならさらに危険だ。米国外交評議会(CFR)のジュリア・スウェイグ理事が分類した米国に対する韓国人の見方だけでも、なんと8種もある。反米、崇米、嫌米、賛米、連米、用米、抗米、貶米がそれだが、このうち、はたしてどれが売国に近いか。極端な左派の見方からすれば、連米、用米でさえ売国かもしれない。しかし、なんとかして米国を利用するのが、この時代の愛国ではないか。
◆この政権下で閣僚、党首、院内代表を経験した実力者たちが相次いでFTAに反対している。大統領選挙の予備候補とされる金槿泰(キム・グンテ)、千正培(チョン・ジョンベ)議員はハンストまで行っている。理解しがたい行動だ。反対するなら現職の時にすべきだったのではないか。彼らも韓米FTAを売国だと考えてのことだろうか、それとも大統領選挙を控えて票を意識してのことだろうか。彼らの機会主義的な行動こそ、いかにも売国的だ。
権順澤(クォン・スンテク)論説委員 maypole@donga.com






