「山がいくら高くても越えることができます」
韓米自由貿易協定(FTA)の金宗壎(キム・ジョンフン)韓国側交渉団首席代表(写真)の声は明快だった。山登りのマニアである金代表は「交渉はどの程度進んでいるか」という質問にこのように答えた。
金代表は20日(現地時間)午後8時、交渉場である米国ワシントンのルネサンス・メイフラワーホテル周辺の中国レストランで記者らと会い、夕食を兼ねた懇談会を開き、交渉の進み具合と見通し、各種の批判世論に対する所感などを虚心坦懐に打ち明けた。
●「これからはビッグディールのタイミング」
——高官級交渉はどのくらい進んだか。
「もう出るべきものはすべて出つくしたので、本当にビッグディールをしなければならない。これまでは仮定を前提にアイディアをやり取りしたとすれば、これからはこれだと思えば実行に移さなければならない」
昨年6月、韓米FTAの第1次交渉を皮切りに10ヶ月の間「韓国がAを与えるとしたら米国からはBがほしい」という式の交渉を行ったとすれば、今や「仮定」を除いて実際にやり取りをしなければならないという話だ。
——ビッグディールの対象は…。
「韓国が攻勢をする自動車と纎維の関税廃止案、貿易救済などと、米国が攻勢を取る農産物と通信、医薬品など主な争点10個程度を挙げることができる」
両国は交渉期限があまり残っていない点を勘案し、一つを与えて一つを諦める単純なディールではなく、主な争点を一つのパッケージに束ねて、お互いに「利益のバランス」を取る方式で一括妥結を模索している。
——今回、争点はすべて妥結できるのか。
「1、2個の争点は最後まで解決されずに残る可能性もある。時間を引きずる各争点は『建設的な模倣性(constructive ambiguity)』をもって処理する可能性が高い。例えば、開城(ケソン)工業団地製品の韓国産認定問題など政治的に解決すべき部分は『後で議論する』という方式だ」
●ディールブレーカー1、2個残る
金代表は全般的な交渉妥結を楽観しながらも、「これから大きな峠が多く残されている」とし慎重な態度を見せた。実際にソウルとワシントンで自動車、農業、纎維などについて高位級の会議が行われているが、これといった方策を見出せずにいる。
——交渉がはかどらない原因は何か。
「特に農業は交渉の窓口が多数あってはならない。長官がしきりに出ては困る」
金代表のこのような発言は、最近、朴弘綬(パク・ホンス)農林部長官が農業分野の開放に反対するという発言を何度もしたことを念頭に置いているように見える。
——纎維、農業分野の交渉が特に進まないが…。
「纎維と農業分野の交渉は、現在、産業資源部と農林部次官が別途交渉を行っているが、通商長官級の会議が中盤に入れば、まとめて取り上げるという戦略だ。交渉の進行スピードが遅いわけではない。その間『枝切り』の過程があったからこの程度であるわけで、第4次、5次交渉が終わる頃だったら夜を明かしても妥結は難しいだろう」
●「フォーチュンクッキー」の運勢メモ、「今こそ実行に移すタイミング」
金代表は韓米FTAに反対する声に対しても詳細に反論した。
「政界で『韓米FTAはマイナスFTAだ』『FTAを締結するなら、私を踏んで通れ』などの反対の声が出ているが、(それが)民主主義ではないか」
——韓国があまりにも多く譲歩しているという意見については…。
「私の考えは違う。米国のほうがもっと開放されているからだ。厚着の人と薄着の人を比べる時、同じ時間で脱ぐことはできない。一例として、サービス分野の交渉で韓国はサービス分野の開放除外リスト(留保案)で90個余りを載せたが、米国は20個前後にとどまった」
米国市場のほうが開放されているために韓国のほうが相対的にもっとたくさん与えるかのように見えるが、損するように見える国は開放が不十分なほうだと考えればよいとのことだ。
食事が終わりかけた時、テーブルには幸せをもたらすという「フォーチュンクッキー」がデザートで出た。クッキーの中には運勢が書かれている。
金代表が取り上げたフォーチュンクッキーの運勢は?「暇つぶし」だったが、関心が集まった。クッキーを開けて、入っている紙片を見ると、「アイディアばかり出していないで、これからは実行に移すように」と書かれていた。
韓米FTAの妥結期限が10日ほど残された今、「最後の交渉」に神経を尖らせている金代表の表情には悲壮感さえあった。
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