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[オピニオン]無害無得

Posted February. 09, 2004 00:41,   

建築業を営むソン・ジンスさん(48)と料理研究家の朴ヒョンシンさん(40)夫婦は4年前から京畿道龍仁(キョンギド・ヨンイン)のトゥチャン貯水池周辺に田園住宅を建てて2人きりで住む。夜明けには水霧が湖いっぱい立ち込めて、夜には草虫の泣く音がオーケストラのメロディーのように鮮明に響く所だ。木工の腕前がずば抜けた夫は田園住宅会社の社長兼働き手で、妻は菜園で育てた各種の野菜と新鮮な果物でいろいろな料理を作って食卓を構えてその品定めを文にまとめる。

◆この家の家訓は「無害無得」だ。朴さんの父親が普段強調してきた言葉は「人を有害にさせてはならず、無理して得になろうとしてはならない」という意味だ。一見、利己主義に思えるが、中味はそうではない。世の中に人を有害にさせる人々が多いのでそうしてはならないという意味であり、他人のために努めながら自分のこともできない人々も少なくないのでそうしてはならないという意味である。家訓のようにこれら夫婦はあまり欲張らず勤勉と誠実、豊富な献立とユーモアで一日一日を楽しく有意義に過ごす。

◆雪嶽山(ソルアクサン)百潭寺(ペクダムサ)の会主・五鉉(オヒョン)和尚は奉仕のために尋ねて来る菩薩たちをよく追い出すことで有名だ。ある日、ある閑な奥さんが尋ねて来て「和尚の食事も作り、生活が苦しい人々のために奉仕もしたい」と言うや、ただちに「舅姑のために朝食は作ってきたのか」と言い返した。もじもじと返事ができなくて顔が赤くなった菩薩に和尚は「行きなさい。行って君の舅姑、ご主人と子供のご飯をちゃんと作りなさい。坊さんとは元々自ら飯を炊いて食べるために出家した人だからお前は気を使うな」と一喝した。

◆この頃、我が社会にどうしてこんなに他人のために生きるという人と団体が多いのか分からない。身近にいる家族や親戚、友達の面倒は見ないくせに、祖国と民族、地球と人類のためだと大口を叩く人々もいる。そんな人々を見れば、「自分のことをまず、ちゃんとしなさい」と言ってあげたりする。1日稼いで1日暮らす平凡な人々はただ他人に迷惑をかけずに自分のことにをしっかり取り組み、もし余力があれば苦しい境遇に置かれた家族、親戚、隣人を人知れず面倒を見てあげることができれば、それで充分なのだ。

呉明哲(オ・ミョンチョル)論説委員 oscar@donga.com