女優出身でギリシャの文化相を勤めたメリナ・メルクーリは、1994年に69歳で他界するまで、波乱万丈の人生を送った。16歳の時に家族の反対を押し切って結婚し、それに失敗した彼女は女優となり、「欲望という名の電車」、「日曜日はダメよ」などの映画で名声を得た。だが、彼女の情熱は銀幕のスターにとどまらなかった。ギリシャの軍事政権に反対してフランスに亡命し、帰国してからは国会に進出した。1981年に文化大臣として入閣したメルクーリは、英国に奪われたギリシャの文化財エルギンマーブルを取り戻す運動に身を捧げ、ガンでこの世を去った。
◆新しい文化観光部長官に任命された李滄東(イ・チャンドン)監督も、多彩な人生を送ってきた点で、メルクーリと似ている。教師生活をしている時に、東亜(トンア)日報の新春文芸を通じて小説家として登壇した文学青年だが、ある日、映画監督に変身して、世間を驚かせた。彼が製作した映画は、芸術性と作品性は認められたが、カネにはならなかった。昨年「オアシス」でベニス映画祭監督賞を受賞した彼が、「妻がもうトロフィーの代りにカネを持ってきてほしいと言い出しそうだ」と感想を述べたのは、「お腹を空かせ寒さに震える」アーティストの悩みを誰よりもよく知っているということだ。
◆昨年、彼は最高の年を送った。「オアシス」で国内外の賞をかき集めて、賛辞を一人占めした。年末に盧武鉉(ノ・ムヒョン)候補を支持するテレビ演説者として姿を現し、今年に入ってからは、新政権の文化部長官の候補に上がった。歴代文化部長官の中で文化人出身として李御寧(イ・オリョン)長官を挙げることができるが、純粋なアーティストとしては彼が初めてと言ってよい。メルクーリが広く評価されるのは、女優としてよりも文化部長官としての活躍のためだ。彼女のエルギンマーブルを取り戻す運動はまだ功をなしていないが、世界の共感を得ることができた。李監督は長官としてどんな姿を見せてくれるだろうか。
◆李長官が文化人出身だということは確かに長所だが、場合によっては短所にもなりうる。文化の保護論理は優先されるべきだが、文化人の立場でこれを過渡に受け入れてしまえば、韓国文化を閉鎖的な「井の中の蛙」にしてしまう危険性もあるからだ。市民の立場で文化を見通す姿勢が必要だ。文化界ではすでに政府支援金をめぐって、勢力間の対立様相を見せている。文化不毛地であった韓国を文化の「オアシス」にするのが文化部の目標だとすれば、小さな文化界の外に全体の「砂漠」を見る目も持つべきだ。李滄東監督の文化人生はこれからだ。
洪贊植 (ホン・チャンシク)論説委員 chansik@donga.com






