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[オピニオン]マッハ人間

Posted September. 16, 2002 23:00,   

1936年8月1日、ベルリンオリンピック・スタジアム。本部席のど真ん中に座ったヒットラーは、すぐ後に決まる金メダルに期待を膨らましていた。アリアン族の優秀性を誇示するために開催したオリンピックだった。しかも「陸上の花」と呼ばれる男子100mは、それこそドイツが誇る種目ではないか。スタジアムを埋め尽くした10万余りの観衆と、史上初のテレビ中継を見入る人々まで計算すれば、優勝効果はこの上ない。ヒットラーのこの夢は米国の黒人選手によって散々に砕かれた。歴史上、もっとも偉大な陸上選手と言われたジェシー・オーエンスの話だ。

◆10秒2の記録も、当時では驚異的なものだった。しかしオーエンスの「大記録」が、最近は「地域予選」でさえ名刺すらあげられないくらいレベルが高くなった。人間能力の限界とされた10秒の壁を突破したのが1968年のことだ。続いて1991年には9秒90、1999年には9秒80の壁が破られた。15日、新たに世界記録を樹立した米国のモンゴメリーは9秒78でオーエンスより0.42秒速い。「66年間でたったの0.42秒だって?」と言うかも知れないが、100分の1秒差で順位が分かれるのが100m種目だ。モンゴメリーがフィニッシュラインにゴールインしたとき、5m近く遅れている形だから、オーエンスが自分の記録で今のオリンピックに出場していたら最下位を免れるのは難しいだろう。

◆だからといってオーエンスの記録を軽く見るわけにはいかない。最近の記録短縮の相当部分はスポーツ科学によるものだからだ。ナイキ社が作った「スウィフト・ウェアー」は、風の抵抗を少なくするため、顔と指だけを露出するようにできている。5種類の繊維で織り出された新素材ユニフォームを着てみた選手たちは、「服じゃなくて皮膚みたいだ」と感嘆する。100m競技で、たったの5cm先にゴールインできるスポーツシューズを製作するため、スポーツ用品会社は激しい競争を繰り広げる。偏平足の李鳳柱(イ・ボンジュ)が世界マラソンを制覇したのも、特別に工夫されたシューズのお陰だった。スポーツでも科学の力は、このくらい驚くべきものがある。

◆100m記録の人間の限界はどこまでだろうか。数年前、日本で興味深い結果が出た。歴代の男子選手たちの長所だけを集めてシミュレーションしてみたら9秒50が出たという。米国のライダー博士は、過去100年間の記録短縮の推移をもとに、これよりもさらに速い9秒34を限界として提示している。「記録は破られるために存在する」という言葉のように、新しい「マッハ人間」の誕生は、繰り返されるだろう。しかし、その終わりがどこなのかは誰にも分からない。ただ一つだけはっきりしていることは、いくらマッハ人間でも、決してチーターになるわけにはいかないということだ。

崔京和(チェ・ギョンファ)論説委員 bbchoi@donga.com