1992年の大統領選挙の間際、釜山(ブサン)地域の機関長らによる地域感情の助長と官権の介入発言で大きな波紋を引き起こした「草原ふぐ料理店事件」を捜査した際にも、声紋(voice print)が問題になったことがある。当時、検察は発言者とその内容を確認するため、国立科学捜査研究所に録取テープを送り、声紋の分析を依頼した。捜査結果、会合を主宰した金淇春(キム・ギチュン、現ハンナラ党議員)氏が、選挙法違反の疑いで起訴された。「金大業テープ」疑惑で、再び声紋が10年ぶりに政治問題化している。やはり、大統領選を控えた政局と密接なかかわりがある。
◆70年代の初め、フルシチョフの回顧録(「フルシチョフは振返る」)が米国で出版された時、真偽の議論が持ち上がった。出版社側は、フルシチョフがソ連共産党の第1書記から失脚した後、5年にわたって密かに録音しておいた話をもとにして回顧録を出版したとしているが、一部で疑問を提起した。ソ連という国から、フルシチョフのような人物の肉声録音やテープを持ち出すことが可能であるだろうかということだった。米中央情報局(CIA)のねつ造説まで出回った。この録音テープとフルシチョフの国連総会での演説を録音したテープの音声声紋が一致しているとの分析結果が出て、ようやく議論が終息した。
◆必ずしも専門家でなくとも、声を聞くだけで容易に人を識別することができる。人によって顔の形が違うように、声が違うためだ。ことばつきや話し方、語いや表現まで調べれば、話している人の出身地、年齢、性格、学歴、職業まで予測できる場合が少なくない。数年前には、電話をかけると、その場で声を分析して健康状態とストレスの程度をチェックしてくれる会社も現れている。第2次世界大戦前後に音響分析機器が開発され、声紋分析の実用化が始まった。第2次世界大戦当時、米軍は、情報戦にも声紋分析を用いていたとされる。声紋分析結果が違う確率は、10万分の1程度といわれる。
◆声紋分析が最も実用化したのは、やはり犯罪捜査の分野である。しかし、声紋分析結果がそのまま証拠として認められるわけではない。わが国では、87年のウォン・へジュンちゃん誘拐事件の捜査に声紋分析が初めて導入された。警察は、当時録音された脅迫電話の音声と類似した約50人に対する声紋分析を実施して、声紋が一致した犯人から犯行のすべてについて自供を受けるのに成功した。金大業氏が検察に提出した録音テープの真偽も、声紋分析で間もなくはっきりすることだろう。それと同時に、誰がうそをついているのかも明らかになるはずだ。この頃は、うそか否かについてすら科学的に分析して判定する時代なのだ。
林彩清(イム・チェチョン)論説委員






