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[オピニオン]酔画仙とフィーバーノヴァ

Posted June. 03, 2002 22:23,   

私たちが、自らのものを自嘲する際、代表的に取り上げる低質な国産品が、即ち映画とサッカーだった。70、80年代を生きた人々は、ほとんど韓国映画を観なかった。あの頃の若者たちに、印象に残る映画を書かせると「ドクトルジバゴ」「ゴッドファーザー」など、ハリウッド映画づくしだった。

韓国映画は、洋画を輸入するための方便として制作された。韓国映画を4本撮ると、洋画の輸入割り当て1本を与える政府の施策に合わせて、観客を意識しない、奇形の映画が次々と作られていった。

映画祭で賞を取り、洋画輸入枠を与えられたセマウル映画、反共映画の中には、封切館で上映すらされないまま倉庫入り、といったことが日常茶飯事のように起きていた。

韓国の映画は、洋画輸入規制と、映画館の邦画上映日数を強制するスクリーンクォーター制によって、かろうじて持ちこたえていた。映画人はもとより映画の観客も、完成度の高いハリウッド映画を前に絶望し、私たちには映画を作る才能が足りないと、自らを嘆いた。

徹底して韓国映画に顔を背けて来たところへ、ソウルの団成社(ダンソンサ、韓国最初の映画館)で、実に久々に韓国映画に接したのが、林権澤(イム・コンテク)監督の「西便制(ソピョンジェ)」だった。「韓国映画も観る価値がある」という認識を新たにしてからは、噂に上る韓国映画は、必ず観るようにしている。最近は、イ・ジョンヒャン監督の「家へ…」が400万人の観客を超える一方、林監督の「酔画仙」が、カンヌ映画祭で監督賞を受賞して以来、一日平均の観客が倍以上伸びて、50万人を突破した。

近年、韓国映画の質が良くなるに伴い、昨年末の観客シェアは、46%にのぼっている。韓国は、世界でも唯一と言っていいくらい、国内市場でハリウッド映画と張り合う国である。

カンヌ映画祭が、「酔画仙」に監督賞を授賞したのには、韓国映画の質と量にわたる成長を認めたという意味合いも含んでいると言えよう。

今や、韓国映画は中興期を迎えている。優秀な若い人材が映画界に集まる一方、金融機関は大ヒットを夢見て、映画制作に足を踏み入れている。このように、活発な循環が行われるうちに、現代自動車の1年分にあたる純益を映画1本で稼いでしまう、世界的なブロックバスターが忠武路(チュンムロ、韓国のハリウッド)で作られるのも、まんざら夢ではない。

サッカーも、映画のように観客の愛情を糧にして育つ。国産のサッカーは、野球やバスケットボールに観客を取られ、いつもがらんと空いたスタンドに囲まれて試合をしていた。日本のプロサッカーリーグのJリーグは、興行に成功したのに反して韓国のKリーグは、観客の足が伸びなかった。水原(スウォン)W杯スタジアムを埋め尽くした4万人の観衆は、世界最強のフランスを相手に、対等な試合を展開する韓国サッカーに、この上ない満足感を共有していた。

この頃は、行く先々でサッカーの解説者に出会う。タクシーの運転手も、政治評論を止め、サッカーの解説に興じる。「フランスが体力を惜しんだ」「戦力の露出を嫌がった」との解釈もなくはないが、韓国チームも同じようにプレッシャーをかかえて戦った。何といっても、スコットランド、イングランド、フランスとの試合内容は、ヨーロッパ勢のサッカーに5対0でやられた、かつての韓国サッカーではなかった。ポーランドチームのエンゲル監督は、韓国とフランスの親善試合について「あくまでも親善試合にすぎない」と言い切り「韓国を1勝のいけにえにする」と公言したが、一和(イルファ)との親善試合を見るかぎり、その反対になる可能性が強い。

ワールドカップは、単なるスポーツ行事ではなく、政治、経済、文化であり、芸術である。W杯の成功裏の開催と、韓国のサッカーが良い成績を出すことで得られる国のイメージは、金に換えがたいものがある。サッカーだけはずば抜けているものの、政治、経済などほかの全てを「台なし」にしている南米諸国をうらやむ国はない。

しかし、政治、経済が安定し、文化が花咲くフランスでは、サッカーがばく大なシナジー効果を出す。韓国で生産される半導体、自動車、船舶は、世界市場で1、2位を争っている。私たちが撮る映画が、観客の喝采を浴びる一方で、世界中が認め始めた。ここに、サッカーまで強いと考えてみよう。韓国は、南米諸国とは違うのではないか。

サッカーと映画は、これまで私たちが得意としていなかった分野であるが故に、最近の成長がなおさら驚きであり誇らしいのだ。カンヌ映画祭の、黄金のシュロが決して遠いものではなく、W杯のベスト16も、ついそこまで来ている。ベスト16を超えて準々決勝という声もあるが、そうすると、この国には事変に準じた事態が起きるだろう。

罵声と暴露が飛び交う政争に嫌気がさし、いたる所に充満した腐敗の悪臭にうんざりの気持ちだ。ソル・キヒョン、パク・ジソン選手よ、フランス戦同様、ポーランドのゴールに向かってフィーバーノヴァを蹴飛ばせ。チャ・ドゥリ選手よ、今度こそは失敗するな。ポーランドのゴールキーパーが、波打つネットを眺めて呆然と立ち尽くす時、私たちは立ち上がり、歓呼雀躍するだろう。

さあ、ワールドカップだ。

黄鎬澤(ファン・ホテク)論説委員