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[オピニオン]「医政対立」の泥水が沈んだあと

[オピニオン]「医政対立」の泥水が沈んだあと

Posted March. 14, 2026 09:03,   

Updated March. 14, 2026 09:03


来年の医学部定員は490人増え、32の医学部への配分まで終わった。1年半にわたり国を揺るがした「医政対立(医療界と政府の対立)」を思い起こすと、拍子抜けするほど静かな幕引きだ。医政対立という泥水はこうして沈殿した。しかし、歪んだ韓国の医療システムは方向を変えられないまま、同じ流れを続けている。

 

医学部増員の当時の大義は、地域医療と必須医療を立て直すことだった。「救急搬送のたらい回し」が社会問題となり、「出産難民」「小児科遠征」といった言葉が示すように地域医療は崩壊しつつあった。医療界も解決策には違いがあったものの、その大義には同意していた。しかし医学部定員を増やし、地域の医師を採用したからといって、地域・必須医療が自然に立て直されるわけではない。

医政対立の中で明らかになった医療システムの慢性的な弊害も何一つ変わっていない。地域・必須医療の崩壊は、原価にも満たない低い診療報酬、手術より検査の方が高い報酬体系といった歪んだ制度の結果だ。医師が実損医療保険を通じて収益補填に乗り出したことで巨大な自由診療市場も形成された。医療費は毎年急増している一方、患者の満足度は下がっている。にもかかわらず政府も医療界も対立で負った傷が大きいのか、医学部増員後、医療改革の議論は姿を消した状態だ。

医政対立の間に政府、医師、患者の間で不信が生まれたことも、医療改革の動力を取り戻しにくい理由だ。政府と政策パートナーである医療界の溝は深まるだけ深まり、水面下の意思疎通さえほとんど消えたように見える。患者は医師の職業倫理に不信感を抱き、病院に行けば過剰診療をまず疑うようになった。医師たちも「患者と向き合うのが怖くなった」「手術室を守る気力が失われている」と激しい感情を吐露した。

誰もが挫折感にあえぐ中、医師、患者、市民団体が共に医療システムを立て直そうという貴重な声が上がった。医政対立の最中だった2024年から、医療供給者である医師と医療消費者である患者、市民団体が自発的に集まった「医療共同行動」が発足した。これまでの議論は最近、『危機の韓国医療、共に描き直す』という書籍として出版され、「患者中心医療学会」も発足した。

医師と患者が共同で参加する医療界の学会は初めてだ。病院や大学を離れた研修医や医学生に向け「真の被害者は見捨てられた患者だ」と苦言を呈し、医療界内部から批判を受けたソウル大学医学部・病院の教授4人が中心となった。当時激しい批判を浴びせていた多くの医師は、まるで何事もなかったかのように元の場所に戻っていった。しかし彼らは医政対立を引き起こしたシステムを正そうと患者と手を取り合い、正しい政策の根拠を積み上げていこうとしている。

患者中心医療学会の発足を見て、医政対立の際、研修医が病院を飛び出すのではなく患者と連帯して政府に向き合っていたらどうだっただろうかと考えさせられる。医学部定員2千人増員をめぐり医師たちは「受験成績の良い医師に診てもらいたいはずだ」と言った。しかし患者の望みは違った。学会に参加したキム・ソンジュ重症疾患連合会長は14年に食道がんと診断され闘病してきた。キムさんは6日の発足式で「韓国の医療は病気を治す技術は優れているが、患者の人生をケアすることには失敗した」と述べ、命に関わる決定や治療過程から疎外される患者の苦しみを伝えた。医師と患者が互いの苦しみに共感し、政府に誤った医療システムの是正を求めていたなら、今とは違う結末になっていたのではないだろうか。

1年半続いた医政対立が無意味な争いで終わってはならない。患者が治療を受けやすい環境は、医師が働きやすい環境でもある。医学部増員や診療報酬の引き上げといった枝葉の議論から離れ、「患者中心」という原則に立ち返る時、医療界の複雑な難題も絡まった糸を断ち切るように解決していくだろう。