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韓国の秘境全羅北道扶安の内辺山

Posted July. 11, 2001 20:35,   

西海(ソヘ)に面した辺山(ビョンサン・全北扶安郡)に行ってみよう。半島の西側、そこから再び小さな半島を成しているところ。海に面した半島の三面を、山裾に沿って一周する国道30号線が走っている。曲がりくねった、水と海の境界さえはっきりしない海岸線は、粋で哀れをおびた南道カラック(節)のように、途切れそうでいて途切れないといった「味な」景色が続いている。その先の海に点々と浮かぶ大小様々な島々…。潮の退いた潟上にぽつんと佇む釣舟と相まって、7月の昼下がりのどかな辺山の風景を描いている。

端を意味する「辺」(ビョン)の字に「山」(サン)と書いて辺山(ビョンサン)と読む。「わざわざ解釈するまでもありませんよ。見ての通りですから」。金堤(キムジェ)と扶安の広々とした緑の大地を横切り、辺山に向かう途中で出会ったある老人の言葉だ。確かにこの半島は、名前からして「山」である。実際に辺山半島を旅してみると、海と山はコインの両面のごとく二つではなかった。にもかかわらず辺山と言えば、採石江(チェソックカン)や赤壁江(チョックピョックカン)と並んで辺山およびギョッポ浜辺といった「海の辺山」を想像しがちだ。事実、山はそっちのけで海水浴客だけがにぎわっている。

そのためだろうか。辺山は、その内と外の区別がはっきりしている。山寄りの内辺山と海寄りの外辺山がそれ。半島の真中に位置する内辺山は、ウイサン峰を基点にして様々な峰が丸く聳えており、その内側には空洞状の山岳地形になっている。山全体を覆っている松林は、鬱蒼と生茂るあまり、外からは木の枝が見えないほど。その外の海に向かって外辺山が広がる。この夏辺山の海を訪れる人には、ぜひとも辺山の珍景の裏側も必見の価値はあると、お勧めしたい。

午前7時、来蘇寺(ネソサ・扶安郡チンソ面ソッポ里)一柱門(イルチュムン)の前。霧雨の降る白い朝、伽藍の裏側に屏風を広げたごとく広がる観音峰からは、白い雲が龍のおくびのように森の間から沸き上がっていた。仏の世界に入ることを告げる一柱門。何歩も歩いただろうか。全長30mもある大きな樅の木がびっしりと聳える森の間をぬって、トンネルのような道が現れた。樅の香りが仄かに漂う森のトンネル道は、なんと400mも続いている。その先には四天王門が待ち受ける。門をくぐると、堂宇(大小の家)が仲良く並ぶ境内が目に入る。樹齢1000年を数える壮大なけやきを中心に本堂と寮舎チェ(棟)(僧侶や訪問客が泊まる所)、梵鐘閣、薬水の場、茶屋などが立ち並んでいる。現在、この寺に滞在する僧侶は20人あまり。夏安居(ハアンゴ・4—7月の3ヵ月間一切の外出を避け修業に打ち込むこと)を迎え、禅房で勇猛精進する僧侶たちの世話をしていたジンソンという法名を持つ僧侶が、接客に応じてくれた。

「松風桧雨(夕立の雨音のごとくに聞こえる松や樅の木の間を吹きすさぶ風の音)、冬朝白花(冬の朝扉を開けると、昨夜降った雪で何もかもが白く覆われた世の中を目にすること)、四月新緑(新春の新緑)、蘇寺暮鐘(夕日が暮れかかる港に向かって大漁の旗を靡かせながら帰ってくる黄布の帆を揚げた漁船と、その時仄かに鳴り響く来蘇寺の太鼓の音が調和をなす豊かな海の風景)が、辺山の秘境と言えるでしょう」。

本堂の軒下で雨宿りをしながら聞かせてくれた辺山の美しい景色。言葉通りだ。その話を聞いた後、改めて周りの景色を見渡すと、これまでとは違って見えた。

来蘇寺の樅の森から傍に入ると、山の向うのジックソの滝に出る道だ。内辺山の秘境が集まる山の中を歩く旅もいいが、車を飛ばして海と山を一通り鑑賞できる国道30号線を走り、山の反対側の渓谷を通ってジックソの滝に向かう、軽いトラッキングコースも良いだろう。扶安から辺山に向かう途中(国道30号線)「ジックソ滝まで15km」という道標が示す地方道路736号線を走っていくと、扶安多目的ダム移設道路に出る。このサジャ洞三叉路から600mほど入ると、辺山国立公園内辺山チケット売場だ。チケット売場から滝の展望台までは2.2kmの見事な林道が続く。チケット売場を過ぎて最初に目にするのは、朝鮮戦争当時焼失したシルサン寺の跡。もう少し先に進むと、野性の花園とバードウォッチングのできる自然樹木園に辿り着く。自然保護憲章碑の前を過ぎて橋を渡ると、平らな岩に漢文が刻まれたボンレ九谷とその端に沿って林道が続いている。ここから滝まで1.6kmの林道区間のうち1.3kmは、あらゆる木々に名札を付ける一方、木の階段を取付けて歩きやすくした「自然学習探訪道」となっている。途中、渓谷のダムによってできた素敵な湖に沿いを歩くこともできる。湖を過ぎ再び森に入ると「のっそりのっそりと歩くひき蛙」の生息地。雨の日には、ひき蛙の数匹くらいは簡単に目に入る所だ。

急な岩の階段を上って滝の展望台に立つと、玉女(オクニョ)峰・仙人(ソンイン)峰・双仙(サンソン)峰に取囲まれて凹んだ形をした盆地の中腹で、絶えず白い渓谷の水を垂直に落としているジックソの滝(落差30m)が正面に見えてきた。滝の絶景をさらにもう一つ紹介しよう。展望台の真下にあるブンオク潭(または仙女の湯)がある。龍沼から流れ、再び滝を成して流れた水がしばらく休んで行く所で、渓谷にできた二つの澄んだ池のようだ。



趙誠夏 summer@donga.com