中国のことわざに「睜一隻眼閉一隻眼」という表現がある。直訳すると「片方の目は開け、もう片方の目は閉じる」という意味だ。日常では相手の過ちを知りながら見て見ぬふりをする際に使われる。人間関係では寛容や美徳と受け止められることもあるが、社会や政治の領域では責任逃れや違法行為の黙認という意味合いが強い。中国が「血盟」と持ち上げる北朝鮮との8日の首脳会談で、「非核化」の「核」の字すら口にしなかった姿も、それと大差ないように見える。
今回の朝中首脳会談における最大のメッセージは「語られなかったこと(What was left unsaid)」だったと、英字紙ジャパン・タイムズは伝えた。中国の習近平国家主席は2019年の初訪朝時には「韓半島非核化における中国の役割」を強調したが、今回は沈黙によって北朝鮮の核保有を事実上認めたとの評価が多い。
行き詰まった南北関係の中で、中国の仲介役に期待してきた韓国政府としては、肩透かしを食らった気分かもしれない。李在明(イ・ジェミョン)政権発足後、昨年11月と今年1月の2度の首脳会談でも、「韓半島の平和」や「非核化構想」を積極的に提起した。しかし中国は、いざ北朝鮮と向き合うと核問題について沈黙した。それどころか、北朝鮮が第9回党大会で提示した目標を達成することを望むと表明した。北朝鮮は第9回党大会で核保有国としての地位を明確にし、南北を敵対的な2国家関係と規定している。
これは北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記にとって成果だ。北朝鮮はすでにロシアと軍事・経済両面で密着しており、中国との経済協力まで再び活発化すれば、国際社会による対北朝鮮制裁の効果は大きく弱まる可能性がある。中国とロシアはさらに踏み込み、先月の首脳会談後に発表した共同声明で「一方的な対北制裁に反対する」と明らかにした。中国とロシアの支援を受ける北朝鮮にとっては、核放棄を前提とする米国との対話に応じる要因も大幅に減ることになる。
北朝鮮の核戦力増強は、韓半島を超えて北東アジア全体を揺るがしかねない悪材料だ。北朝鮮の核挑発は、日本を含む他国の核武装の口実を与え、地域の軍拡競争をあおる恐れがある。何より地政学的リスクが国家発展の大きな障害となってきた韓国にとっては深刻な問題だ。中国の黙認の下で北朝鮮が軽率な判断を下す前に、手を打たなければならない時期に来ている。
北朝鮮の核問題解決に向けて歩調を合わせてきた米国との結束強化が重要だ。朝中首脳会談直後の11日にソウルで開かれた第6回韓米核協議グループ(NCG)会合後の共同声明に、「北朝鮮の非核化」が初めて盛り込まれたことも同じ文脈だ。翌12日に東京で北朝鮮問題をめぐる韓米日協議が開かれ、最近急速に立場調整が進んでいることも前向きな動きだ。
むろん、中国との対話を放棄したり軽視したりしてはならない。中国としても、国境を接する北朝鮮が核戦力と長距離ミサイル能力を拡大し続け、それを口実に米国が地域の軍事力を増強することは望ましくない。ある外交筋は最近、中国が「韓半島非核化」という用語の使用を控えていることについて、「非核化の放棄や反対というより、新たなコンセンサスが存在しないためだ」と説明した。中国も北朝鮮の核開発を阻止できなかったことへの責任をある程度認識しているが、すでに北朝鮮が核を保有している現実の中で苦悩しているということだ。
李在明(イ・ジェミョン)大統領は10日の就任1周年記者会見で、「今は核物質の追加生産停止などを短期目標として交渉すべきだ」とし、「それをもって『なぜ非核化を放棄したのか』と言うなら、さらに状況を悪化させることになる」と強調した。韓国と中国の悩みは、必ずしも大きく異ならないのかもしれない。中国が「韓半島非核化」を究極的な目標として見失うことなく、一歩ずつでも前進できるよう、引き続き働きかけと説得を続ける必要がある。
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