
トランプ米大統領が「韓国国会が貿易合意を履行していない」として関税再賦課方針を示したことで、韓米の戦略的投資に関する覚書(MOU)に明記された「対米投資の安全装置」が、事実上無力化されかねないとの懸念が強まっている。韓国政府が対米投資負担を緩和するための装置として強調してきた条項が、米国の圧力によって実効性を失う可能性があるという指摘だ。
韓米両国は昨年11月の首脳会談後、関税・安全保障に関する「ジョイント・ファクトシート(共同説明資料)」とともにMOUを公開した。米国は韓国自動車などの品目関税および相互関税を15%に引き下げる一方、韓国は総額3500億ドル規模の対米投資を約束した。
韓国政府は当時、為替市場の不安定化などを理由に、投資時期や規模を調整できる安全装置を確保したと説明していた。実際、共同説明資料には「MOU上の公約履行がウォンの不規則な変動など市場不安を引き起こす恐れがある場合、韓国は調達金額や時期の調整を要請でき、米国は信義をもって検討する」との文言が盛り込まれている。投資対象も「商業的合理性」がある事業に限定され、収益配分構造についても、一定期間内に元利金返済が困難な場合には調整できるとされている。
しかし、韓国政府が最近、為替不安などを理由に投資時期の調整可能性を示唆すると、トランプ氏が直ちに関税の原状回復に言及し、こうした安全装置が実際に機能するのか疑問視する声が出ている。梨花(イファ)女子大学経済学科の石秉勲(ソク・ビョンフン)教授は「『信義をもって検討する』という表現は、韓国の要求を必ず受け入れるという意味ではない」とし、「トランプ氏が韓国の為替市場状況に配慮して投資ペースを緩める可能性は高くない」と指摘した。
投資先の選定過程における安全装置も不安要因として挙げられている。2千億ドル規模の現金投資の場合、米大統領が米商務長官を委員長とする「投資委員会」の推薦を受けて投資事業を選定する構造だ。韓国政府は、投資委員会が韓国の産業通商資源部長官を委員長とする「協議委員会」と協議し、「商業的に合理的」な投資のみを選定すると説明してきた。
これについて、西江(ソガン)大学経済学科のホ・ジョン教授は「履行時期や方法、『合理性』の基準が明確でなく、韓国政府の意見が反映されない可能性がある」とし、「投資事業の選定、投資規模や時期など、あらゆる文言が紛争の火種になり得る」と指摘した。
イ・ユンテ記者 oldsport@donga.com






