世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が韓日海底トンネル建設などの宿願事業のため、政界と学界を網羅する「VIPライン」を形成するとして組織的ロビーを推進していたことが明らかになった。第20代大統領選の5カ月前に当たる2021年10月、旧統一教会幹部らが、韓日海底トンネルを立法・政策化する大統領や知事に票を集中させる必要があるとして、得票活動ができる旧統一教会信徒を72の市郡区ごとに150人ずつ集めるなど、具体的ロードマップまで作っていたという。韓日トンネル研究会のような傘下団体まで作り、与野党の大統領選陣営に政策提案書を送り、政治家と接触していたという。
当時、旧統一教会が政界を相手に行ったロビーはそれだけではない。新政権発足後、米国大使・日本大使のポストや国会議員の公認権まで狙った形跡もある。旧統一教会の主要幹部会議では、ユン・ヨンホ元世界本部長らが「青瓦台の補佐陣に入るべきだ」「2027年に大統領選挑戦も可能だ」との発言までしたとされる。ユン氏は与野党の大統領候補が米国の大物政治家と会う場を取り持ち、「(費用問題を)処理してやれば、結びつきが強くなる。保険をかけることだ」とも発言したという。宗教団体幹部がこうした言葉を口にすること自体、驚かされる。
検察も、旧統一教会の取り込みの対象だった。警察が確保した2017年の韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁への報告文書には、「我々が望んだ検事1人が(ソウル)東部地検に配置された。8カ月準備した」と記されていた。ある旧統一教会幹部は「東部地検の人々の接待で、忙しい秋夕(チュソク)を過ごした」とも語ったという。当時、旧統一教会は教団と財産を巡り争っていた韓氏の息子が、ソウルの一等地にある旧統一教会の持ち分を処分したことを問題視し、ソウル東部地検に横領容疑で告発していた。捜査が旧統一教会に有利に進むよう検察に対してロビーを行ったことがうかがえる。
旧統一教会の全方位的ロビーは、自らの利権のためなら政界を買収対象とみなし、検察さえ味方にできるという傲慢さを露呈している。いったいどこまで思い通りにしようとしていたのか。旧統一教会はユン氏個人の逸脱だと主張するが、韓氏に報告された文書が見つかり、傘下団体が動員されるなど、教団レベルの組織的政治介入を示す証拠が次々と明らかになっている。旧統一教会との関与疑惑が提起される政治家も増えている。与野党が旧統一教会特検に合意しながら、後続協議は進まない。迅速に、聖域なき捜査が行われなければならない。
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