2010年代以降の韓国経済の低成長を象徴する言葉は少なくないが、「ピーターパン企業」ほど問題の核心を鋭く突いた言葉も珍しい。大人になっても子どもでいたいと願う大人のように、意図的に成長を拒む企業はもはや企業とは言い難い。そうした企業が集まった経済が、正常に機能するはずもない。問題は、韓国社会が10年以上にわたり、このピーターパン企業問題の糸口をつかめずにいる点だ。
韓国メディアが、ピーターパン企業という名称を付けて注目し始めたのは2012年である。当時、全国経済人連合会(現韓国経済人協会)が中小企業279社を調査したところ、10社中3社が中小企業の地位維持のため意図的な構造調整、分社、工場の海外移転などを行ったと答えた。企業が成長のためではなく、成長しないために力を注いでいることが明らかになり、各界から懸念の声が上がった。
当時、中小企業が中堅企業へ脱皮した瞬間160件の恩恵が消え、84件の規制が追加されることが判明した。今年9月、釜山(プサン)大学のキム・ヨンジュ教授チームが行った同じ調査では、追加規制が94件と10件増えた。企業規模が少し大きくなるだけで、税金や研究開発(R&D)、金融など様々な支援が断たれる。成長で得られる対価より「成長痛」がはるかに大きいため、多くの企業が成長回避を選ぶ。小企業経営者の間では、「売上1億ウォンを減らし、小企業の恩恵を維持する方が、売上10億ウォンを増やすより得だ」という話が公然と語られるほどである。
韓国経済は、ピーターパン企業が注目された2012年に2.4%の成長にとどまり、本格的な2~3%台の低成長軌道に入った。少子高齢化、中国の製造業攻勢など構造的問題の方が大きな影響を与えたのは確かだ。しかし経済の根幹である中小企業の多くが、人材と売上の成長を意図的に抑える状況では、高成長は他国の話にすぎない。今や大企業規制を恐れる優良中堅企業までが、ピーターパン企業の列に加わっている。
この13年間、ピーターパン企業解消のための多くの処方が提示されてきた。昨年、中堅企業へ成長した中小企業に最大7年間の税制優遇を与える対策が出された。R&D税額控除の猶予適用の道も開かれた。ただし遅きに失したのではないかとの懸念も少なくない。
すでに韓国企業の平均従業員数は、2016年の43人から2023年には40.7人にまで縮小した。中堅企業に成長した後再び中小企業に戻った企業は、2023年だけで570社余りに達した。2020~2023年に中小企業1万社のうち中堅企業へと成長した企業はわずか4社(0.04%)にとどまった。最初の警告音が鳴った2012年に適切に対応できなかったことが、10年以上にわたり韓国型低成長を加速させた結果を招いた。
解決策は容易ではないが単純だ。企業が成長せざるを得ない生態系を作ればよい。企業規模に応じた単純支援を減らし、成長する企業を追加支援すべきである。民間では中小企業から中堅企業へと成長した企業を探し、「報奨(リワード)」を与えようという主張まで出ている。成長を恐れる企業と国に未来はない。来年こそピーターパン企業が消える元年となることを期待する。
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