Go to contents

「連想ゲーム」で導かれた医学部増員2000人

「連想ゲーム」で導かれた医学部増員2000人

Posted December. 06, 2025 10:09,   

Updated December. 06, 2025 10:09


12・3非常戒厳の宣布直前に開かれた「5分間閣議」の防犯カメラの映像を見ると、尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領が発言する間、閣僚10人のうち誰も制止しなかった。出席者は静かに耳を傾け、戒厳指示文書を恭しく受け取った。映像を見ても信じがたい光景だった。

監査院が最近公開した「医学部増員推進過程」監査報告書は、「5分間閣議」のような異常な国政運営が日常化していたことを示している。「尹前大統領の指示で医学部定員2000人増が決定された」とする結論より、行間ににじむ常識外れの国政運営に驚かされる。尹氏は一度も「2000」という数字を具体的に指示したことはなかった。大統領室参謀と政府官僚が、粗暴な性格の大統領に逆らうまいと「連想ゲーム」のように集団知を働かせた結果だった。

医学部増員案の最初の報告は2023年6月だった。25年から毎年500人ずつ増やす案だった。これについて曺圭鴻(チョ・ギュホン)前保健福祉部長官は「医学部増員に関する大統領の考えを探る目的で、前政権が推進した年400人増を参考に提示した数字」と証言した。科学的試算や医療界との合意より、大統領の顔色をうかがうための「探りの数字」だったということだ。尹氏は「それで問題が解決するのか。1000人以上増やさねばならない」とこれを退けた。

福祉部は同年10月、大統領報告の草案を再び作成した。25年から3年間、毎年1000人ずつ増やし、その後定員を再調整するという案だった。これを事前に検討した安祥薰(アン・サンフン)大統領社会首席秘書官(当時)が「1000人程度で報告すると叱られるかもしれない」とし、朴敏守(パク・ミンス)福祉部次官(当時)に再作成を指示した。

政策合理性でも政務判断でもなく、ただ「叱られる恐れ」だけで修正を指示し、それが通ってしまった。福祉部は草案を修正し、3年間毎年1000人、任期最終年に2000人増とする案を作った。それでも尹氏は「必要なだけ十分にもっと増やせ」と重ねて指示した。出席者の誰も「十分に」の意味を尋ねず、適正規模や教育環境を説明しようともしなかった。

2度退けられると、曺氏は「大統領が『十分な増員』を繰り返し指示したが、どの程度が十分なのか悩んだ」と述べた。所管省庁長官の「悩み」の水準がこの程度だった。そこで福祉部は3件の報告書を総合し、2035年不足医師数1万人という根拠を見つけた。

福祉部の「1万人不足」試算を報告された李官燮(イ・グァンソプ)政策室長(当時)が「2000人」という数字を初めて口にした。曺氏に「初年度から2000人一括増員で行こう」と提案した。福祉部はこれを反映し、同年12月に「900〜2000人段階的増員案」と「2000人一括増員案」を大統領に報告した。尹氏は段階案には反対し、一括案には「さらに検討せよ」と指示した。昨年2月6日、福祉部は大統領が拒否しなかった「2000人増員案」を大統領の意向として報告・発表した。

そして1年7カ月、医政対立で国中が混乱に陥った。議論どころか指示に異を唱える者がいないため、医学部増員のような非合理政策が生まれ、釜山(プサン)エキスポ誘致失敗のように国力が浪費された。結局、尹氏は戒厳に突き進んだ。ポストにふさわしい責任感を欠いた「イエスマン」官僚の卑怯さも動力となったのだろう。