
「1千のアイデアのうち1つだけでも面白ければ、それで幸せなんです」
先月30日、ソウル冠岳区(クァンアクク)のソウル大学で取材に応じたノーベル物理学賞選考委員のエバ・オルソン教授(スウェーデン・チャルマース工科大学)は、アルフレッド・ノーベルの名言を引用してこう語った。そして「若手研究者の挑戦精神と失敗を受け入れる社会的な雰囲気、そしてそれを支える研究環境が重要だ」と強調した。
近年のノーベル賞発表で日本は科学分野の受賞者を相次いで輩出しているが、韓国は依然として部門受賞者がいない。オルソン氏が同日、ソウル大学のキム・ジュハン研究副総長とともに「次世代ノーベル賞級研究者を育てるための韓国科学の課題」をテーマに対談した理由もそこにある。ナノ・生物物理学の世界的権威であり、顕微鏡分析研究の第一人者でもあるオルソン氏は、何よりも自律性と失敗を許す研究文化の必要性を強調した。
「(研究者が)大きな飛躍を遂げるには勇気と実験精神が必要です。ところが3年単位の課題で毎回成果を出さなければならない状況では、誰がリスクを取るでしょうか」と問いかけた。韓国の研究費制度は2〜3年単位で成果を評価する仕組みが多い。キム氏も「現在の研究評価体制は論文と特許の数、つまり量的成果に偏っている。米マサチューセッツ工科大学(MIT)のように、若手研究者が長期テーマに集中できる環境を保障する必要がある」と指摘した。
オルソン氏はまた、新たな発見のためには活発な国際的ネットワーキングが欠かせないと強調。「他の研究者の研究やアイデアに心を開くことは、新たな着想を得る機会につながる。国際学会で議論する機会を持つとき、新しい発見が芽生える」と説明した。
韓国が半導体や人工知能(AI)など応用科学では頭角を現している一方、物理・化学など純粋科学が弱いとの指摘に対し、「基礎科学と応用科学は対立ではなく相互作用する二つの軸。偶然の発見は準備された基礎研究から生まれる」と話した。
キム氏は「韓国の若い科学者たちはすでに世界水準の研究をしているが、世代をつなぐ学問的伝統が不足している。ノーベル賞は一世代の成果ではなく、蓄積された文化の結実だ」と強調した。
チェ・ヒョジョン記者 ソ・ソルヒ記者 hyoehyoe22@donga.com






