
エヌビディア(NVIDIA)の最新グラフィック処理装置(GPU)26万枚の供給は、GPU不足で人工知能(AI)の発展が停滞していた韓国産業界に新たな息吹をもたらすとみられる。特に政府主導で進める「ソブリン(主権)AI」をはじめ、様々な民間AI産業に活力を吹き込み、韓国のAI競争力が一段と跳躍すると期待されている。
NVIDIAのGPUは、世界的な「AIブーム」で品薄現象を起こしている。AI用GPUは、1枚あたり1億ウォンに達するほど高価で、金を払って注文しても数か月間待たなければならないのが現状だ。生産量は限られている一方で、オープンAIやグーグル、アマゾンなどの巨大IT企業が大量に購入するためだ。米政府が、対中国抑止など安全保障上の理由で輸出を統制している影響も大きい。
韓国はこれまで、AIインフラへの投資が不十分で、GPUの量が絶対的に不足していた。企業だけでなく政府や大学でもAIを研究開発するインフラ自体が確保されておらず、先端産業でのグローバル競争力が後退する懸念が高まっていた。海外の巨大IT企業は少なくとも数万枚、多ければ数十万枚のGPUを保有しているが、韓国は2023年末時点で官民合わせても2000枚に過ぎなかった。韓国政府および企業のAI能力を合わせても、海外の巨大IT企業1社にも及ばない状況だ。
韓国はすでに「第1ラウンド」のAIファンデーションモデルで出遅れたが、フィジカル(物理)AIや推論型AIに発展する現段階は、グローバル主導権を握る最後の「ゴールデンタイム」との指摘がある。NVIDIAのGPUをはじめとするAIチップは、近年AIがロボットや自動運転、先端医療など日常生活に応用され始め、自ら思考し判断する推論まで行うようになったことで、第2の好況期を迎えている。
韓国は今回の大規模なGPUの確保で、AIでの反転の機会をつかむことになった。何より今後、韓国政府が韓米中の「AI三大強国」を目標に推進するソブリンAI事業に拍車がかかるだろうと期待される。政府は8月、ネイバーやアップステージ、SKテレコム、NC AI、LG AI研究院の5チームを選定し、独自のファンデーションモデルの開発に着手している。
さらにNVIDIA・GPUの注文が増えれば、三星電子やSKハイニックスのメモリ半導体の業績にも好影響を及ぼすと期待される。NVIDIAが韓国に供給するGPU「ブラックウェル」のモデルには、両社の高帯域幅メモリ(HBM)3Eが搭載される。将来、次世代GPU「Rubin」に搭載されるHBM4の供給拡大の可能性もある。
パク・ヒョンイク記者 beepark@donga.com






